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米ベーグル最大手チェーンが明かす顧客データ分析による店舗売上げ拡大戦略


 マイクロストラテジー・ジャパンの特別協賛で3月に開催された「日経産業新聞フォーラム2014」に、米国のベーグル最大手チェーン「Einstein Noah Restaurant Group(アインシュタイン・ノア)」の担当者が登壇。「お客様満足のより良い理解をどう店舗売上げにつなげるのか」と題した講演を行い、データ分析を売上向上につなげる取り組みのポイントを紹介した。講演の模様をレポートする。

顧客データ分析をもとに「勝つための計画」を実行

 アインシュタイン・ノアはコロラド州デンバーに本社を置く米国最大のベーグル販売業者だ。「Einstein Bros. Bagles」「Noah's New York Bagels」「Manhattan Bagel」の3ブランドを約900店舗で展開し、店舗売上高は約4億3448万ドル(2013年12月末)に上る。日本ではそれほど馴染みがないが、コストコ(Costco)の通販サイトが同社のベーグルを扱っており、そこで購入することができる。

ピーター・ゲドニー氏
ピーター・ゲドニー氏

 講演を行ったのは、同社のエンタープライズソリューション担当ディレクター、ピーター・ゲドニー(Peter Gedney)氏。講演の内容は、アインシュタイン・ノアが2012年から実施してきた顧客分析に基づく売上向上策「Plan to Win(勝つための計画)」プログラムの取り組みについてだ。ゲドニー氏はまず、小売や外食チェーンにおける一般的な売上向上策と対比させながら、同プログラムの特徴を次のように説明した。

 「店舗の売上を増加させるには、新規顧客を獲得するか、既存顧客の来店頻度を増加させるかという2つのアプローチがある。この2つを促進する要因を分析したところ、4つの要因があることがわかった。つまり、新製品、マーケティング、第一印象、顧客満足だ。前の2つは、新規顧客にも既存顧客にも効果がある一方、後ろの2つは、それぞれ新規顧客、既存顧客に固有の要因となっていた。Plan to Winプログラムでは、後ろの2つの要因に着目した」(同氏)

 Plan to Winプログラムは、持続可能な成長を続けていくことを目的とした店舗運営の改革プロジェクトだ。新製品の投入やマーケティングといった従来のセオリーに沿った施策だけでなく、「顧客データの分析」をもとに顧客サービスや顧客満足の向上を実現し、それにより売上を拡大させていくことを狙ったものだ。

 このプロジェクトを進めるにあたり注目したのが、新たな顧客を獲得するための「最高の第一印象」と、既存顧客のリピート率を高めるための「顧客満足度の向上」だ。簡単に言えば、「第一印象が良ければ新たな顧客となり、満足度が高ければ顧客はもういちど来店するようになる」という知見をデータを使って検証したものだ。

 「われわれは、これらを実現し売上を上げるために、"妥協なきサービス"を徹底して追求することにした。具体的には、顧客サービスと店内の雰囲気を卓越したものにすること、注文にすばやく間違いなく対応すること、店内で最高を時間を過ごしてもらい、熱狂的なファンを醸成していくことなどだ。これらについて、指標をつくり、顧客の多様な側面を測定、それを施策として実行した」(同氏)

指標に対する顧客のフィードバックを分析

 指標としては、まず店舗が基本として行うべきサービスの水準として、「清潔さ(Clean)」「欠品のなさ(Available)」「迅速な提供(Timely)」「正確さ(Accurate)」の4つがある。また、他店との差別化を生むサービスとして「親しみやすさ(Friendly)」「個人的なかかわり(Personal)」「フードの味(Taste of Food)」「ドリンクの味(Taste of Beverage)」の4つがある。

 これらはさらに分類されており、親しみやすさについては「挨拶ができているか(Greet)」「感謝されているか(Thank)」、個人的なつながりについては「店員との交流があるか(Crew Interaction)」「店長との交流があるか(Manager Interaction)」「親近感があるか(Warmth)」などとなる。指標は現在17項目に上る。

 「これら指標について、顧客がアンケートで直接答えられるようにした。たとえば、POSレジのレシートにクーポンを付け、これらアンケートに答えることで、クーポンが利用できるようなキャンペーンを継続的に実施する。次に、アンケートの結果を店舗ごとに集計し、実際の店舗の売上との相関を分析する。こうした分析をリアルタイムに行って、店舗ごとに売上向上のための対策を打っていく」(同氏)

 たとえば、売上が急伸している店舗は、4つの基本サービスの指標(清潔さ、欠品のなさ、迅速な提供、正確さ)のどの指標が高いのかを知ることができるようになっている。また、挨拶を徹底したり、店員が顧客とコミュニケーションをとったりすることで、売上がどのくらい伸びるのかを知ることができる。

 こうしたデータは各店舗に配布されたタブレットを使って閲覧できる。タブレットは本部社員や経営層にも配布されており、それぞれの立場から、店舗の評価をビジュアルに把握することが可能だ。データは継続して蓄積されていくので、過去の履歴から、どの指標が高ければ売上が伸びやすいのかを探ることができる。また、地図データと居住人口などのデータを組み合わせながら、エリアごとの店舗特性を調べるといった使い方も可能だ。

 「顧客の来店データは従来から取得していたが、明確な指標がなく、データもスタッフがExcelを使って手作業で管理する体制だった。データを統合して分析することは困難で、店舗運営に生かすことはほとんどできなかった。だが、タブレットを導入し、タブレットで使えるBIツールを利用することで状況が一変した。顧客サービスが売上にどう影響するかを誰でも簡単に把握できるようになった」(同氏)

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ハリケーン発生や大統領訪問といったイベントデータの活用も視野に

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この記事の著者

齋藤公二(サイトウコウジ)

インサイト合同会社「月刊Computerwold」「CIO Magazine」(IDGジャパン)の記者、編集者などを経て、2011年11月インサイト合同会社設立。エンタープライズITを中心とした記事の執筆、編集のほか、OSSを利用した企業Webサイト、サービスサイトの制作を担当する。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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