米国市場に日本などのソフトウェアベンダーが進出する際には、通常は現地法人を立てそこにまずは日本から経営陣を送り込む。そして必要に応じて現地スタッフを雇い、ビジネス活動を始めることになる。このアプローチならば、比較的小さな投資で始められる。もう1つは現地の適当な企業を買収し、それを足がかりにビジネスを始める方法だ。後者のアプローチをとったほうが、当然ながらビジネスの立ち上がりは早い。買収する企業が新たに進出する企業のビジネス領域と近ければ、すでにビジネス基盤は整っていることになり、よりスムースに米国市場にビジネスを展開できる。しかしながら、企業買収となるので初期投資がかなり大きなものとなるのがデメリットだ。しかし、時間と既存市場、慣れた現地のスタッフを手に入れられると考えられれば、この方法のほうが有効だと判断できるだろう。実際にそんな判断を下したのが、韓国のソフトウェアベンダーであるTOBESOFTだ。同社は米国のNexaweb Incを買収し、新たに米国市場への参入を果たした。
現地企業を買収するというアプローチで米国市場進出を果たしたTOBESOFT

この新しいアプローチを採用したのは、過去にいくつかの韓国企業がまずは現地法人を立てる方法で米国進出を試みたが、それがあまり成功していなかったからだとTOBESOFTおよびNexaweb IncのPresidentであるダスティ・キム氏は言う。
変化の激しいクラウド時代には、ビジネス立ち上げの俊敏性は必須だ。大きな投資は必要となるが、ビジネス立ち上げのための時間を買うほうが重要だったのだろう。今後同社が米国でのビジネスをさらに拡大できれば、現地法人を買収する市場進出方法が有効なことも証明できそうだ。
UI/UXでNo1になる
買収したNexaweb IncはTOBESOFTの100%子会社となった。そしてNexaweb Incは、韓国以外の拠点会社の本社と位置づけられている。一連の本社サイドの動きにともない、それぞれの企業の日本法人だった日本ネクサウェブとトゥービーソフトジャパンは合併し、Nexaweb Incの下に新生日本ネクサウェブが2014年4月1日に誕生した。
旧日本ネクサウェブでは、大規模Webシステム向けRIA(Rich Internet Applications)開発環境「Nexaweb Platform」、さらにはPower BuilderやVisual Basicなどで開発されたアプリケーションのWebアプリケーションへの移行などをサポートする「マイグレーション・ソリューション」を提供していた。また、トゥービーソフトジャパンでは、ワンソース・マルチユースプラットフォームの「XPLATFORM」を提供してきた。新生日本ネクサウェブでは、これら両社の製品、ソリューションはそのまま引き継いでビジネスを行う。サポートの体制、両社の従業員、販売パートナーなどもそのまま引き継がれる。
さらに新生日本ネクサウェブでは、5月にはXPLATFORMの後継となる「nexacro PLATFORM」を新たに提供する。これはワンソースでマルチユースできるというコンセプトはXPLATFORMと同様で、HTML5部分を書き換えモバイル向け機能を大幅に強化した製品となる。nexacroが今後は主力に位置づけられ、XPLATFORMはPCのWindowsで利用するランタイム・バージョン中心の製品となっていく予定だ。
新生日本ネクサウェブでは、具体的な将来ビジョンも描いている。まずは、「日本国内における企業向けUI/UX(User Interface/User eXperience)でNo1になります」と言うのは、日本ネクサウェブ 副社長の矢形勝志氏だ。現段階で企業向けUI/UXの領域において明確な競合企業はないとも言う。ではどうやってその領域でのNo1を証明するのか。「そのためには7割から8割のSIerなどが、UI/UXと言えばNexawebだよねと言ってもらえるようにします」と矢形氏。
さらに、2019年には東京証券取引所MOTHERSでの上場を目指し、2020年には日本で一番働きたい企業になるための基盤を確立するとの目標も掲げられた。日本ネクサウェブの既存のパートナーは、NTTコムウェアや日立ソリューションズなど国内有力SIerも多い。米国を含むグローバル展開が順調に進み、製品やサービスの進化が加速すればこれらパートナー企業との協業もさらに進むだろう。そうなれば、ここで挙げられた高い目標についても達成できる可能性は高い。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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