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学生たちのアイデアが次代の日本のITを元気にする!―enPiTビジネスアプリケーション分野成果発表会

 大学を卒業し就職してしばらく時間が経つと、学問や教育の世界はどうしても縁遠くなる。就職先が研究職ならばいざしらず、ビジネスの世界に入ると滅多に大学キャンパスに足を踏み入れることはない。とはいえ海外の大学などでは、積極的に企業と連携しそこから新たなビジネスの革新が生まれることも珍しくない。

産学が遠いのはもったいない

 先日、佐賀県CIOなどさまざまな要職を歴任し、現在は公共イノベーション代表を務める川島宏一氏に話を訊く機会があった。その際、記事には書ききれなかったが興味深い話があった。それが、地方活性化を教育から進めるというもの。そのための方法の1つが、地域にある大学を核にするアイデアだ。各大学の得意とする分野や領域をもっとアピールし、その分野でビジネスを行っている企業などを大学周辺に積極的に誘致し大学と連携する。結果的に地域に根ざした特長のある街作りがなされ、雇用も生まれ活性化につながるというものだ。

 残念ながら日本では大学が首都圏に集中している。大学と企業が積極的に連携するようになっても、首都圏にしか恩恵は出ないかもしれない。各地にあるユニークな大学が実際にどんな魅力的な研究活動を行っているのか、それが誰にでも簡単に分かる仕組みが欲しいところだ。そういったことが真の意味での大学ブランドの向上となり、地域活性化の核への第一歩となるのではないだろうか。

 当然だが、現状でもさまざまな大学が興味深い教育、研究活動を行っている。残念ながらそれらをメディアが取り上げられることは少ない。「分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワークenPiT」も、そんな活動の1つである。enPiTは、大学間、大学と企業間で緊密に連携をとり、社会の新たな価値や産業の創出を「情報技術の応用」を通じて行える人材の育成を目指している。

 具体的にはクラウドコンピューティング、セキュリティ、組込みシステム、ビジネスアプリケーションの4つの分野において、グループワークや短期集中合宿、分散PBL(課題解決型学習)を実施し、世界に通用する実践力を備えた人材を育成しているのだ。これは文部科学省が進めている、情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業の1つでもある。

 enPiTのビジネスアプリケーション分野の活動は、筑波大学大学院システム情報工学研究科、公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科、産業技術大学院大学産業技術研究科という3つの大学が連携大学として核となり進められている。それに茨城大学、会津大学、埼玉大学、お茶の水大学、津田塾大学、愛媛大学、岩手大学、琉球大など全国各地の多数の大学が参加している。さらに連携企業としてNPO高度情報通信人材育成支援センター(CeFIL)、およびCeFILを窓口にNTTデータ、新日鉄ソリューションズ、日立製作所、富士通などが、この活動と連携した実績がある。

 このenPiTのビジネスアプリケーション分野の成果発表会が、12月5日に筑波大学で行われた。2014年は8月18日から短期合宿を行い、その後は大学をまたがったチーム編成でグループごとに開発テーマを定め、分散PBLの形で開発プロジェクトを続けてきた。参加したのは各大学の大学院1年生、2年生が70名。

 成果発表会の冒頭、筑波大学コンピューターサイエンス専攻長の田中二郎教授は「受動的に授業を受けるのではなく、学生が主導的に参加しているのがenPiTの活動です。ここに参加している学生は、他の学生とはちょっと違います。そういう意味では、彼らは就職にも困らないでしょう」と言う。

 筑波大学コンピューターサイエンス専攻長 田中二郎教授
 筑波大学コンピューターサイエンス専攻長 田中二郎教授

 またCeFIL理事の菊池純男氏は、「日本は産学が遠い。それは日本としても無駄です。もっと交流を進めるべきです」と言い、そのためにもCeFILではenPiTとの連携を行っているとのこと。そして学生に向け「技術を通して社会を変えることに取り組んで欲しい。ICTを使って安全、安心、快適な社会をどう実現するのか。新たな雇用を作り出すようなもの、そしてみんながHappyになる社会を目指して欲しい」と言う。

 CeFIL理事の菊池純男氏
CeFIL理事の菊池純男氏

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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