SOAは、当初その言葉の定義や技術要素ばかりが先行して話題の中心となっていた。話題先行のSOAを、いざ自社で実現しようとすると大きな投資と苦労が伴うものだった。SOAというシステムの姿を明らかにし、その具体的な成果を得るにはどうしたらいいかは手探りの状態が続いていたのだ。 そもそも、SOAという方向に向かう企業は、その成果をどこに見いだせばいいのだろうか。目的が明確化されていないうちに、見切り発車的にSOAにチャレンジした企業も、多々あるかもしれない。
俊敏性こそがSOAの基本的な目的
1996年、自らのレポートの中で世の中で最初にSOAという言葉を用いたガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストのロイ・シュルテ氏は、7月15日に東京で行われた「ガートナー SOAサミット 2008」のジェネラル・セッションにおいて、ITシステムは企業の役に立っているのかという、大きな疑問を投げかけた。
いまや、お金さえ出せば誰でもITの技術を手に入れることはできる。とはいえ、同じIT技術を手に入れたからといって、それで成功する企業もあれば、失敗する企業もある。
たくさんの投資を行い、すばらしい技術をいち早く手に入れることができたとしても、企業にとってその優位性は一時的なものに過ぎず、優位性を保つことができるのはほんの短い期間にすぎない。
つまり、今の時代、IT技術だけで他社を出し抜くことはもはや難しい状況にあるのだ。重要なのは、手に入れたIT技術をどう活用するかということ。
そもそもIT技術は最初に考案し企業に投入されたときに、そのメリットが最大になるものではない。継続的に利用し、改良を続けることで段階的にメリットが出てくるものだ。
継続的に利用し改良を重ねていくためには、ITシステムが俊敏性を持つ必要がある。この俊敏性こそが「SOAのもっとも基本的な目的だ」とシュルテ氏は指摘する。 企業のシステムにおいて、俊敏性を実現するのがSOAというアーキテクチャだ。
SOAというのは、ITシステムの設計における戦略でもある。その戦略の具体的な中身が、アプリケーションのコンポーネントのカプセル化により、改良を容易にすることである。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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