
ランサムウェアの被害が深刻になってきている。感染するとデータの暗号化を行い、解除と引き替えに金銭を要求する悪質なマルウェアだ。対策として有効なのがデータのバックアップ。暗号化されようとも、データを元に戻せるなら要求に応じる必要はないからだ。アクロニス・ジャパン(以下、アクロニス)とカスペルスキーがランサムウェアの最新情報とバックアップソリューションについて解説した。
ランサムウェアが猛威を振るう理由
5月27日、アクロニスは「ランサムウェア その脅威と対策 ~万全のセキュリティ対策と有効なバックアップ&データ保護~」と題したセミナーを開催。ランサムウェアについての最新情報をカスペルスキー 代表取締役社長 川合林太郎氏が解説した。カスペルスキーはエンドポイント保護などITセキュリティのためのソリューションを提供している。

カスペルスキー 代表取締役社長 川合 林太郎氏
ランサムウェアは最近急速に猛威を振るっている。最初の登場は2005年という記録があるものの、実質的には2012年から。2015年になるとCryptoLockerなどが猛威を振るい、被害が急増している。2016年に入り日本でも被害事例が頻出し、ニュースでも報道されるようになってきた。
ランサムウェアというと活動はユーザーデータの暗号化というイメージが強いものの、スクリーンをロックしたり、マスターブートレコードを書き換えてハードディスク全体を暗号化してシステムが起動できないようにするものもある。
身代金はビットコインで指定されることが多い。ただし個人だとビットコインを用意する方法が分からないまま時間切れとなり、支払に応じられないケースもある。最近ではPayPalやiTunesカードなど個人でも支払いやすい手段も提示されるようになり、不正とはいえビジネスとして成果を着実に上げられるようになってきている。
「(犯人たちは)荒稼ぎしています」と川合氏は言う。個人だと要求金額は平均で数百ドル程度、企業だともっとつり上がる。海外だと、犯人は最初に高い金額を要求したもののFAXも使うなど執拗に脅迫を繰り返し、途中で値引きに応じるなど、サイバー攻撃にも関わらず泥臭く交渉するケースもあったという。サイバー攻撃とはいえ大事なデータを盾にとられているので、しぶしぶ要求に応じる被害者は少なくない。今や被害額は3億米ドルとも言われている。
技術的な仕組みで見ると、ランサムウェアはトロイの木馬と暗号化を組み合わせたものからできている。メールからサイトへのリダイレクトまたは添付ファイル(マクロやJavaScript)から感染させる。最近の統計データを見ると、ドロッパー(ランサムウェアを仕込んだメール)が配布されてから1週間ほどで活動は収束している。これは配布されてもエンドポイント製品が対応するためだ。次々と新しいものが配布されている。
ランサムウェアが猛威を振るう理由として川合氏は「手軽だから」と言う。標的型攻撃のように準備や侵入をすることなく、技術的な難易度は低い。今ではランサムウェアを販売するWebサイトもあるほどだ。こうしたものを利用すれば、犯人がやることはランサムウェアを仕込んだメールを一斉配布するだけ。後は口を開けて待っていれば身代金が入ってくるようなもの。川合氏は「ランサムウェアは今後も引き続き猛威を振るうでしょう。2016年のセキュリティで大きなトピックになるのは間違いありません」と警告する。
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加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
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