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歴史あるSI企業でSlack導入に成功した方法――そして社内の風通しが良くなりムダや停滞感も消えていった

 「Slack」はスタートアップやWeb系の企業で人気のチャットツールだ。導入例も枚挙に暇がない。一方でセゾン情報システムズのような、45年以上の歴史を誇るエンタープライズ系のSI企業で利用するとなると話は別である。筆者は2年前からセゾン情報システムズの取締役 兼 CTO、1年前からは常務取締役 兼 CTOを務めているが、社内の風通しの悪さに課題を感じ、Slackを導入することにした。Slack導入後、一時は利用者数が落ち込むような時期もあったが、今ではコミュニケーションインフラとしてすっかり定着している。本稿では、Slackはなぜすばらしいのか、導入時には何が起こり、どのようなことでつまずきそうになったのか、またそれをどのように乗り越えたのかを紹介する。

小野氏が社内にSlackを導入した理由や動機については、小野氏のブログに詳しい。(編集部)

「Slack」とは

 Slackはチャットツールの1つで、「チーム」に招待されたメンバー間で会話ができる。会話はトピックごとに「チャンネル」を立て、そこにチームのメンバーを呼んで行う。外部のツールやサービスと連携したり、Bot(ボット)と呼ばれる自動応答プログラムを作成し、会話に参加させたりもできる。腕に覚えのある開発者などは、会話で命じられたBotが、外部のツールやサービスを使った一連の処理を実行する仕組みを構築している(SlackのWebサイト)。

セゾン情報システムズで使われているSlackの画面。画面左側の縦に並んでいる1つ1つがチャンネルで、右側は選択したチャンネルで交わされている会話
セゾン情報システムズで使われているSlackの画面。画面左側の縦に並んでいる1つ1つがチャンネルで、右側は選択したチャンネルで交わされている会話[クリックすると図が拡大します]

重要なのはコミュニケーションの「友達感覚化」

 メールをはじめとする従来の連絡手段には、様々な様式がつきまとう。文章冒頭の「○○さん」から始まり、「お疲れ様です。」「以上、よろしくお願いします。」などだ。

 しかし、Slackでこのような書き込みをする人はいない。セゾン情報システムズのような歴史の古い会社であっても、である。

 すると、伝えたい内容だけが前面に出てくる

 また、メールのように冒頭で「○○部長」というように相手の肩書を書くことがなく、メールにおける末尾のシグニチャのように発言ごとに所属組織が表明されることもないので、所属組織や立場よりも個人が前面に出やすい

 このように、「定型的な言葉よりも発言内容が」「所属意識や立場よりも個人が」それぞれ前面に出やすいことから、Slackで行われる会話は自然と友達同士の間で交わすようなものに近づく。ちょっとしたことだが、とても大事なことなのだ。

個人ではなく、場に対して書き込む

 Slackを使っていると、書き込みに対して、思いもよらぬところから反応が返ってくることがある。

 あるとき、目指していた資格を取ったことをSlackに投稿した人がいた。すると、上司のさらに上司という、顔を合わせることもまれなエライ人から、「すごいね、○○さん! これからも期待してるよ!!」というコメントが届いたのだ。

 なぜ、こうしたことが起こるのかというと、Slackでは原則として特定の個人に対してではなく、場に対して書き込みが行われるからだ。

 これがもし、同僚や上司や他部署のひとり一人に「資格取れました!」と送りつけてしまったら、一体この人はどれだけアピールしたいんだ、ということになってしまう。だが、Slackではチャンネルという場に出す。個々人にではない。だから、資格を取ったという個人的なこともほとんど抵抗なく書き込めるし、それに対して気軽にリアクションしたり、返信したりもできるのだ。

 何か提案があるときのケースを考えてみよう。

「今週、○○という作業をしていて、もし△△のようにできたらもっと効率化できるかも、と思った。今度時間がある時に試してみよう」

 こうした書き込みに対して、たまたま隣の部署で同じようなことを思い、途中まで取り組んでいる人がいたとする。

「あ、それ私も同じこと思って、いま実は部内でXXという形で改善しようとしてるんです!」

 なんてコメントを返す。そして、それを見ていた取締役が、

「それならバーチャルチームを作って部署横断的にやらない? 俺が旗振るよ」

と書き込みをして、事業部を越えた連携が実現したりする。

 これまでのコミュニケーション手段は、宛先を指定する必要があるものがほとんどだった。だがSlackでは、あくまでもチャンネルという「場」に対して書き込みを行う。そして、どのチャンネルに参加するのか、またどのチャンネルから抜けるのか、といったことはすべて個人の自由だ。

気を使うことなく投稿できる気楽さに業務上のメリット

 社内で何かに問題を感じている人がいるとしよう。その人が誰かに相談することも吐き出すこともできず、我慢に我慢を重ねて、どうにもならないところまで来てしまった――そうなると大変である。一気に爆発して、上長では収まらず、社長に直談判せざるを得ないなんて事態になるかもしれない。

 しかし、Slackでは問題が軽微な段階で、「こういうの何とかしたいですねー」などと書き込むことができる。同じことが気になっていた上層部のメンバーがいれば、「やはりそうだったか」と投稿を拾ってアクションを起こすこともあるだろう。逆に、「それは問題ではないのだ」と考えているメンバーがいて、なぜそれが問題ではないのかをSlackで返してくれたら、「そういうことだったのか」と納得して気持ちよく仕事に取り組めるかもしれない。

 情報共有についても、メールよりもずっと気軽に行うことができる。

 「FYI:」で始まるメールで情報共有のメールを流すのは、なんだか気が引ける。なぜなら、返信必須の重要なメールなどに混ざって、「あくまでもご参考まで(For Your Information)」というメールが流れてしまうことになるからだ。

 また、そのようなメールが流れてくるメーリングリストから抜けたくても、それが部署の全員が含まれるメーリングリストだったりしたら、自分だけ抜けるというのはあまりにも大げさだ。内容はどうあれ、部署宛に来るものを迷惑メール判定して自動振り分けしてしまうのも問題がある。

 Slackでは、情報共有のための投稿もチャンネルという場に対して行われるので、「ちょっと情報が多すぎるな」と感じるのであればそのチャンネルから抜ければよいし、逆に興味が出てきたら再度参加すればよい。Slackにはこうした参加/不参加の自由があるので、投稿する側も気を使う必要がないのだ。

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大手や老舗の企業がつまずく導入時の問題とその解決策

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この記事の著者

小野 和俊(オノ カズトシ)

セゾン情報システムズ常務取締役CTO 兼 アプレッソ代表取締役社長。大学卒業後サン・マイクロシステムズに就職し、シリコンバレー本社での開発を経験。その後24歳でアプレッソを起業し、DataSpid...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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