2世代へと進展したプライベートクラウド
OpenStack Summitは、クラウド開発者・運用者向けのグローバルイベントとして年に2回、世界各国の都市に毎回場所を変えながら開催されている。直近では、2017年5月8日〜12日に米国・ボストンで開催された。この記者発表会では最初に、ボストンで開催された「OpenStack Summit Boston 2017」について、日本OpenStackユーザ会の会長であるNTTソフトウェアイノベーションセンタの水野伸太郎氏から、基調講演の内容を中心に報告がなされた。
OpenStack Summit Boston 2017には、63ヵ国から約5,000人が参加。初日、2日目の基調講演では、OpenStackに関する最新トピックやユーザ事例の紹介などが行われたという。
普及期を迎えたOpenStackの今後の方向性は?
OpenStackの導入数は44%増加しており、Fortune 100企業も半数以上が利用している。OpenStack Foundationはこういった数値からOpenStackは普及期に入っていると断じ、今後次のような分野に注力するとその方針を打ち出した。
まず、OpenStackの約60個もの公式プロジェクトについて、その内容や成熟度を明らかにしていく。コミュニティとして「OpenStackとは何か」を明確に発信していくことがその狙いだ。OpenStack FoundationのWebサイトでは、Project Navigatorで各プロジェクトの詳細を確認できるようになっている。
プロジェクトに関しては、機能のスリム化、設計の簡易化、重複プロジェクトの削除などを行い、OpenStackの複雑さを改善していくという。OpenStackは運用やデプロイが難しく、それが普及の障壁になっていることは否めないことが背景にある。
また、クラウドストレージシステムを実現する「Swift」のように、OpenStackには単体で活用されているコンポーネントもある。今後は、OpenStack全体としてだけでなく、個々のコンポーネントを、他のオープンソースソフトウェア(OSS)と組み合わせて利用するようなユースケースを広げていく。
ユーザから開発者へのフィードバックループも向上させる。その第一歩として、今回のOpenStack Summitでは、運用者と開発者が共通の問題について議論できる場として「Forum」というセッションを新設。OpenStack Summitのあり方を問い直す、大きな変更の1つとなった。
最後に、コミュニティリーダーの育成が挙げられた。コミュニティへの参加障壁を下げ、特に米国以外から開発者を取り込みたいとのことだ。
プライベートクラウドは第2世代へ〜規模に関わりなく多様なユースケースに対応
OpenStackのユースケースは、以前は大規模企業がパブリッククラウドでは提供されない機能や大規模クラウドを目的に、自社内の技術チームによりプライベートクラウド構築を行うといったものが多かった。しかし、最近では、規模に関係なく簡単に、幅広いユースケースに適用する事例が増えていることから、OpenStack Foundationはプライベートクラウドが第2世代に推移しており、新しいサービスが登場していると紹介した。
そのようなサービスの1つが、遠隔管理プライベートクラウド(Remotely-Managed Private Cloud)だ。サービス側に用意されたプライベートクラウド環境を提供するホステッドプライベートクラウドとは異なり、ネットワークやストレージなどの環境は自前で用意してもらい、コントローラ、いわゆるSaaSの部分のみを提供する形のサービスである。情報保全やHPCなどパブリッククラウドでは贖えないが、かといって自らアプリケーションを用意するのは手間がかかるといったニーズに対応する。OpenStack FoundationのThe OpenStack Marketplaceページには、Private Cloud as a Serviceとして、ホステッドプライベートクラウドと遠隔管理プライベートクラウドが紹介されている。水野氏は、遠からず日本でもこのようなサービスが登場するだろうと予測している。