「脱・属人化」で不況を乗り切れ
2008年から始まった世界同時不況の影響は、確実にユーザ企業の情報システム投資にも波及しています。金融業、製造業を筆頭に、ユーザ企業のシステム予算は確実に削られていることでしょう。
このような状況では、新システムの開発費は真っ先に削られます。進行中の多くのプロジェクトが中止されることでしょう。代わりに保守開発の案件は今までより増えるかもしれません。ですが、1案件当たりの予算額は今までより減らされることになると思います。
保守開発と比べて、新システムの開発は格段と費用がかかるものです。新システムを開発した場合、ユーザ企業にとって将来見込めるリターンは大きいかもしれません。しかし、かけた費用を回収できるのは大分将来になってしまいます。そう考えると、ユーザ企業は当面は新システムが必要になるような業務改善または商品・サービス企画を見送り、代わりに現行システムをがまんして使い続けることを選択せざるをえないでしょう。
1案件当たりの予算額が減るという事実に直面すれば、ユーザ企業もベンダーも対処を考えなければなりません。ユーザ企業としては、2つの選択肢が考えられます。1つ目に今より低価格なベンダーへに切り替えること、2つ目に今のベンダーに値下げを求めること、このどちらかが必要になるでしょう。いずれを選んだにしても保守開発の属人化が問題となります。
ベンダー切り替えは「脱・属人化」が大前提
まず、1つ目のベンダー切り替えのケースについて考えてみましょう。ベンダーの切り替えを行うには、現行システムがベンダーに属人化していないというのが条件になります。
属人化している状況で切り替えてしまうと、次のベンダーはどう保守したらよいか分からないため、これまで以上に工数をかけてシステムをリリースすることになります。おそらく膨大な数のバグも一緒にリリースしてしまうことになるでしょう。結局のところ、ベンダーを切り替える前には、ベンダーに属人化している状態から脱却し、誰でも保守できる用意をしておかなければいけません。
コスト削減にも「脱・属人化」が必要
次に、2つ目の値下げのケースです。ユーザ企業がベンダーに値下げを求めた場合、ベンダー側はそれによって利益が減ることを社内で認めてもらうか、利益が減らないような施策をとる必要があります。そうでない限り、ユーザ企業に「はい」とは答える訳にはいきません。
そうなれば、ベンダーは保守開発のコストを削減して利益を確保することを真剣に考える必要が出てきます。ここで鍵となるのが、やはり「脱・属人化」です。実は、保守開発の属人化は、保守開発案件にかなり不経済な影響を与えています。