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「最初のバージョンではお客様の声は聞きません」―良いパッケージを作るには


 インフォテリア 平野洋一郎氏とワークスアプリケーションズ 廣原亜樹氏がパッケージ開発について語る。日本でパッケージの導入や開発が普及しないのはなぜか。請負開発とどのように違うのか。

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左 ワークスアプリケーションズ 廣原亜樹氏
右 インフォテリア 平野洋一郎氏

廣原亜樹(以下、廣原):私の社会人スタートは教育関連企業の情報システム部からでした。そこで社内のシステム開発・運用から保守まで一通り経験してきました。3年ほど働くうちに、もっと多くの人に使われるソフトウェアの開発に携わってみたいと思い、1999年からワークスアプリケーションズで働いています。当初3年は製品開発エンジニアとして、その後は新しいプロダクトの立ち上げと同時にその製品の開発責任者となり、10年ほど勤めました。そして現在は、人工知能型ERPシステム「HUE」のアプリケーションデザインディレクターをしています。

平野洋一郎(以下、平野):私は中学3年生からプログラミングを始め、大学2年生の時に大学を辞めて先輩と一緒にパッケージソフト開発会社の設立に参画しました。そこで開発した日本語ワープロソフトはベストセラーになりました。当時は1984年、製品は8ビット版で、まだ「一太郎」が登場する前でした。

廣原:ほおお。

平野:日本一の次は世界一を目指し、1987年にロータスに転職しました。当時MS-DOSの時代でロータスは大ヒット製品「1-2-3」があり、マイクロソフトよりも売上の大きいソフトウェアで世界一の会社でした。ただ、ロータスには開発ではなくマーケティングに10年ほど従事しました。1998年にインフォテリアを起業して、会社は今年で19歳になりました。ずっとパッケージソフト一筋です。

パッケージソフトの魅力やメリットはどこにある?

廣原:情報システム部にいたときは、「自分で作るのが一番良い」と思っていました。

平野:本当に自分で?それともSIに?

廣原:自社開発です。SIに依頼する場合、望み通りに作ってもらうには、まず自分たちでパーフェクトな設計をする必要があります。ただ、設計をディティールまですべて完璧にやろうとするとものすごく大変だし、一方でそこまでできるのだったら「なぜ人に頼むのか」と開発を依頼するのが無意味に思えてしまって。委託先に支払う費用のことも考えると、「自分たちで開発するのが、一番良いシステムができる」と思っていました。

平野:パッケージはどうでしたか?

廣原:ぴったりしたものがなくて。結局はカスタマイズしたり、アドオンを利用しながらだったので、もどかしさを感じていました。

平野:よく言われることですが、日本では自分の業務を変えようとしない傾向があります。自分の業務にぴったりしたものがないからという理由で作り込むことになりがちです。

廣原:その通りだと思います。ただ、情報システム部はエンドユーザーではなく、システムを利用するのはユーザー部門です。そのため、業務を変えるところまで情報システム部が踏み込むことはなかなかできず、結果的にユーザー部門が満足するまで開発し続けることになってしまいがちでした。

平野:そのときの廣原さんの最適解は「自分で開発する」だったのですね。

廣原:はい。それで少し思い上がったところがあったかもしれませんが、「自分たちで作ってここまで仕上がるのだったら、自分が作る側に回ればいいのでは」と考えたのです。それでワークスアプリケーションズに入社したのですが、最初にまずパッケージ製品の設定の多さに驚きました。

平野:設定とは?

廣原:画面レイアウトから業務処理の方法など、何から何までです。社内向けシステム開発でも柔軟性や汎用性は考慮するものの、利用部門は限られていますので「なんでもかんでも」できるようには作りません。しかしワークスの製品は本当に「なんでもかんでも」できるように感じました。理由を聞くと「日本中の大手企業で使える製品にするため」と。決して「なんでもかんでも」できる訳ではなく、日本の大手企業の業務を想定すると幾つもの業務パターンがあり、その業務処理すべてを設定の組み合わせによって実現できるようにしてある、とのことでした。そうするとパッケージのプログラムはif文だらけでとても複雑になります。当時は「ここまでしないと多くの企業が使えるようにはならないんだ」と驚きました。同時に、あらゆるケースを想定し、将来の変化も考え尽くしてパッケージを開発することは「面白い」と感じました。それは今でも続いています。平野さんはパッケージ開発のどんなところが良いとお考えですか?

平野:ソフトウェア産業の良いところとして「製造工程が要らない」が挙げられます。車や家電だと材料を入手して製造する必要がある一方、ソフトウェアは「コピーすればいい」。この特性を生かさないソフトウェア事業って何だろうと思うわけですよ。個別にカスタマイズすると「コピーすればいい」特性をいかせませんから。

廣原:あはは、なるほど。

平野:このような特性から、ソフトウェアは資源も国土も乏しい日本を支える輸出産業にできると考えています。この思いもあり、パッケージソフトウェア開発を続けています。

廣原:そうだったんですね。

平野:現場を考えると、SIに委託すると現在の業務をシステムに「移し込む」ことになります。これでは現場の業務は変わりません。パッケージではいろんな企業のプラクティスから将来のトレンドも新技術も盛り込んで作ります。現場にとって、そうしたパッケージを使うメリットはあると思います。

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日本でパッケージよりSIerが多いのはなぜだろう

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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