なぜAppierが注目され始めたのか
──Appierは以前からWebマーケティング分野でAIに取り組んでこられました。今回の生成AIブームでかなり注目度があがったのではないでしょうか?
生成AIの技術自体は以前からあるもので、Appierも取り組んできました。現在、生成AIが注目されているのは画像生成やテキスト生成が格段に進歩したことと加えて、ChatGPTやMidJourneyなどのわかりやすいUIのサービスが登場したことが理由だと思います。
以前は「AIが作る文章なんて使えない」とか、「AIが作った絵は気持ち悪い」という世間の受け取られ方でしたが、風向きが変わったといえます。Webマーケティングの分野では、2015年ぐらいからのAI活用は「予測」や「顧客分析」が主流で、Appierはその分野での実績を築いてきましたが、クリエイティブ領域での取り組みも、同時に取り組んできていたのです。Appierでは、2年ほど前から、マーケティングの「オーディエンスターゲティング」に関する生成AIを市場に提供しています。Appierの生成AI製品は、デジタルマーケティングの中で、主にオーディエンスターゲティングを的確にするためのソリューションです。今回の生成AIブームであらためて注目度が上がり、問い合わせも激増しています。
──深層学習の応用では、AppierのAI研究者が米国や台湾と共同で手法を発表し、デザインにも適用されていましたね。
その通りです。AppierのAI研究者が中心となって、深層学習を衣服などのデザインに適用する独自手法に関する研究を、2017年に論文として発表しています。たとえば、AIに洋服のトップスを観察させ、(下記の論文の図の中にある)ジーンズやブーツといったアイテムを参考にして、新たなトップスのデザインを生成させるという研究で、この研究論文は世界で権威のあるAAAI2018に採択されています。
こうした研究は言語系でも行っており、Appierはプロダクトとして2021年初頭から市場へ提供していました。たとえば、母の日に向けたプレゼントを求めるユーザーのニーズに基づき、AIが構造化されたキーワード分析を実施します。最終的にはいくつかキーワードを用いた広告を生成し、適切かつ確実なターゲティングを実現するといったサービスです。選定されたキーワードには、人間が直感的に連想する言葉も組み入れられ、実際の購買行動の分析を踏まえてAIが自動的にキーワードを推薦するという仕組みです。このサービスは、2年前のAppierの決算説明書にも記載されていますが、今ようやく機が熟したと言えます。
──Appierで蓄積したAIの技術と生成AIの技術を、どのように連携させるのでしょうか?
Appier社の最大の特長は、OpenAIの言語モデルに自社のAIモデルを組み合わせることにあります。先ほどの例でいえば、母の日のギフトなどのキーワードに関連する言語群を生成し、ECやWeb広告の実績から蓄積されたデータを基に、購買行動に結びついたキーワードの分析を行った上で、その効果を測定し判定するというものです。適切なキーワードを選定し、その関連度合いをネットワーク的に解析するデータベースと、購買行動の成果との連携が最適化されたモデルを形成しています。
たとえば、こちらのソリューションでは、「母の日」「口紅」「販促」という言葉を入力し、マーケティングのための広告キャッチコピーを、複数の言語で自動生成するというものになっています。具体的には私たちのAIとChatGPTの組み合わせによって実現している形になっています。