SaaSから提供するAPIでデータを持たずにBI機能を提供する
Lookerの日本法人がビジネスを開始したのは2018年9月のこと、「これまでの10ヶ月はステルスモードでやってきましたが、これからがグランドオープンです」と語るのは、Looker Data Science バイスプレジデント ジャパンカントリーマネージャーの小澤正治氏だ。ステルスモードの間に、日本の20社ほどにLookerは導入されている。Lookerを導入する企業の傾向としては、Eコマースやマーケットプレイス、デジタルマーケティング関連など、膨大なデータを抱えそれがどんどん増えているような企業となる。
Lookerのアーキテクチャは、まずはさまざまなSaaSのアプリケーションや企業が運用している各種データベースなどのデータソースから、クラウド上のGoogle BigQuery、Snowflake、Amazon Web Servicesといったデータウェアハウスにデータを集める。このデータウェアハウスを構築するところは、特段Lookerの機能が関わるところではない。できあがったデータウェアハウスのデータに、SaaSで提供されるLookerのAPIでアクセスする。LookerではBIのダッシュボードなどもSaaSで提供しており、それらからAPI経由でデータウェアハウスにアクセスしデータの可視化や分析を行うのだ。
LookerのAPIでアクセスするデータベースは、前述のようなクラウド上のデータウェアハウスのサービスだけではない。オンプレミスのOracleやSQL Serverなどのデータベースでももちろん構わない。同時に複数のデータベースをアクセス対象にでき、それらにはJDBC経由のSQLで接続しデータ検索などを行うことになる。複数のデータベースから得られた結果データはLookerの上で統合し、分析、ビジュアル化することが可能だ。またLookerからデータベースにアクセスする際には、ユーザーがSQLを記述しなければならないわけではない。LookerのLooKMLというモデリング言語を使うことで、SQLを抽象化してデータウェアハウスにアクセスできる。
またLookerのAPIを利用して、既存のアプリケーションの中にLookerのデータ分析機能を組み込むこともできる。BIツールだけだと、データアナリストなどデータ分析の専門家しかなかなか使いこなせない。現状では、アナリティクスの民主化なども叫ばれ、ユーザーフレンドリーなBIツールを提供してユーザー層を広げる動きはある。しかしながら実際には誰でもそれを使いこなせるわけではなく、ある程度のデータ分析のリテラシーがなければ全ての従業員がデータ分析を使いこなすまでには至らない。対してLookerでは、APIを使って「普段使っているアプリケーション」の中にアナリティクスの機能を埋め込むことができる。この機能があることで、真に「誰でもデータを活用できるようになる」と語るのは、Lookerのチーフ・プロダクト・オフィサーであるニック・コールドウェル氏だ。
Lookerのビジネスは順調に伸びており、グローバルの顧客数は1,700を越えている。そのうちの1/3は、Lookerの機能をアプリケーションなどに組み込む形で利用している。BIツールを使いやすくして全社員に配るのではなく、普段使われているアプリケーションの中に組み込めるようにする。このLookerのユニークなアプローチは、確かに企業におけるデータ分析の民主化につながるだろう。