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アミタホールディングス 取締役 藤原仁志氏インタビュー クラウド環境マネジメント~循環型社会のための「静脈分野」のIT化に挑む

  2011/02/19 10:00

 企業にとって、廃棄物の処理や再利用は環境貢献の上でも、ビジネスの上でも非常に重要な課題である。「生産に関わる活動は価値を産むのでIT化されるが、廃棄のプロセスは生産に比較して不明確なことが多いが、循環型社会の実現を阻んでいる」とアミタホールディングスの藤原仁志取締役は語る。クラウド技術を用いた、同社の環境マネジメントソリューションの話をうかがった。

再資源化ビジネスとIT

アミタホールディングス株式会社取締役 経営統括室 室長 藤原仁志氏
アミタホールディングス株式会社取締役 経営統括室 室長 藤原仁志氏

 アミタグループの企業としてITソリューションに取り組まれたきっかけを教えてください。

 藤原 アミタグループは、企業の生産段階での廃棄物を、他の製品の原材料や燃料に変えるという「再資源化」事業に愚直に取り組んできた企業です。

 私はそれまで教育産業で教育コンテンツのオンライン化などの事業を手がけていたのですが、社会性のある事業で起業を考え、スウェーデンの環境ビジネスの調査を個人的におこなっていました。

 スウェーデンには、「ナチュラルステップ」という環境ビジネスのNPOがあり、そのNPOを日本で立ち上げようとしていた時、アミタグループの熊野社長と出会い、共感してアミタグループに参加しました。

 アミタエコブレーンの事業は、循環型社会実現に向けて、廃棄物を適正に管理し再活用するためのソリューションを、各企業に提案し支援していくことです。

 具体的には、企業の環境部の支援ビジネスということですか?

 藤原 日本の企業の環境対応部門は、もともと公害対策などから始まっているため、企業にとっての環境課題解決のためにマーケティング発想を持ち込んだり、環境をビジネスとして捉えるという発想に欠ける傾向にあります。我々が環境をソリューションとして提案していくという姿勢を積極的に推進しだしたのは、2000年ごろなのですが、最初の頃はなかなか理解されづらかったですね。

 企業の廃棄物のリサイクルの支援から、環境の社員教育、環境技術に関する情報の提供などをおこなっています。今は環境部門だけではなく、CSR部門への提案も始めています。日本企業の場合、CSRは環境関連部門が担当することも多く、それだけニーズが共通していますから。

静脈分野の透明化が循環型社会の条件

 環境分野でのITソリューション分野に、クラウドを導入するというのはかなり先進的な取り組みですね。

 藤原 狙いは再資源化ノウハウとITを結びつけることです。さらにはアウトソーシングビジネスや、マーケティングのセンスも取り入れた活動を展開しています。

 循環型の社会は、生産という作るための「動脈」と、廃棄という「静脈」の両方で成り立つと考えられます。

 これまで、産業のIT化、システム化といえば、生産の動脈部分に取り組みが行われていて、われわれが「静脈」と呼ぶ、廃棄の領域には手がつけられてきませんでした。

 ERP、サプライチェーンマネジメントなど部品や資材を導入し、素材や資金のリソースを効率的に集約する流れは、付加価値を形成するのでIT化が成り立つのに対して、一方の「廃棄」は価値を産まないとみなされてお金をかけられなかった。そこの分野を、体系化して情報流通によって価値を生む形に転換して、さらにクラウドによって開発コストと運用の手間を大幅に省くことによって、ビジネスプロセスを改革し、マーケットを形成するというのが目的です。

 廃棄物の分野をオープンな市場にするという考えですね。

 藤原 そうですね。そこがオープンにならないと、ブラックボックスのような相対取引だけの市場で廃棄物が流通する状態が続きます。生産プロセスは透明なのに、廃棄のプロセスが不透明になりがちなのは、こういった理由によります。

 日本での廃棄物の情報は環境省の推計がありますが、それはあくまで推計でしかなく、電子化もされてきませんでした。年間1000トン以上の産業廃棄物を出す企業や組織は毎年環境省に報告義務がある。廃棄とリサイクルや焼却について、そのデータすら電子化されていなかったので、それをSalesforceに蓄積していきデータベース化し、再利用と可視化が可能なシステムにしようと考えたのです。

 たとえば、日本に廃棄物処理の許可を持った業者は約24万社あるといわれています。日本にラーメン屋さんは4万件あると聞いたことがありますが、どこへいっても見るけれどそれの5倍以上あるというのはすごい数です(笑)

 その市場が20兆円とも30兆円とも言われています。車の市場でも60兆円なのでその半分。そのぐらいの市場が動いているにかかわらず、一般にそのような巨大産業としての認識が非常に低い。

ITの力で不法投棄はなくせる

 藤原 廃棄物の分野を改革できるとわれわれは考えています。そしてそのためには、インターネットの利用は不可欠です。環境省が推定している4億6千万トンの廃棄物の総量に対して、われわれのデータベースで把握しているのが、1億5000万トンぐらい。つまり3分の1以下です。残りの3分の2はどうなっているのかはわからないという状況です。

 小規模の業者や非公認の業者が持っていって、何処かで捨てている可能性もあります。青森や岩手の不法投棄などの原因かもしれません。こうした不法投棄の始末に国が使う税金も膨大になっています。廃棄の情報化が遅れているため、不法投棄で仕事が発生しているのです。不法投棄の業者だけが悪いのではなくて、企業や行政がITを積極的に活用することによって、この分野を先端産業として育てていけば、法律でがんじがらめに規制するよりもベターなかたちで問題解決できるのではないかと思います。

 「e-廃棄物管理」というソリューションがそれですね。

 藤原 「e-廃棄物管理」は廃棄に関する情報が流通するインフラをなんとかわれわれで作りたいと思い始めた事業で、インターネット上で、廃棄物の管理体制を可視化し、契約書やマニフェスト、廃棄物処理法や処理委託先に関する情報を一元管理するというクラウド型ソリューションです。このサービスが受け入れられた背景には、企業の側に廃棄物を管理したいが、自社だけでコストを担えないという課題があったからだと思います。

 どこの会社も捨てる物の管理のために、システム開発をおこなうことに対しては消極的です。大手であれば、多額の予算をかけて自前のシステムを開発している会社もありますが、毎年のように法律が変わりので、メンテナンス費だけでもかさみ、環境部門のコストは膨大です。e廃棄物管理というSaaS型のシステムを提供して、各社共通のワークフローでデータを整理していくというサービスを提供したところ、非常に好意的に受け止められました。

コンプライアンスやCSRのソリューションとしても有効

 情報システム部門ではなく、環境部門の人にも「クラウド」は理解いただけたということですか。

 藤原 一番納得いただけたのは、廃棄物処理法など環境法対応のバージョンアップを弊社が常におこなっていますので、法律が変わっても新たなシステム投資の必要がないという点です。月々一箇所あたり数万円という毎月の利用料だけで済むというコスト面でのメリットも分かりやすかった。

 ただ各社ごとの法対応やサーバーの場所、データの秘匿性というクラウドに共通の危惧も最初はもちろんありましたが、データはCSVで提供することや、コンプライアンス面での対応に関して、我々が30年間実業としてリサイクルに取り組んできた経験があることで、運用面にリアリティがあることが信頼をいただけている理由だと思います。

 現在では、ライオンさん、キリンビールさんなど一般消費者を顧客として持っておられる業界トップクラスの企業を中心に導入いただいています。

 廃棄物を出す企業と処理する業者の管理も重要になりますね

 藤原 お客様が利用されている処理業者のデータまで含めれば、約4万社ほどあります。同じ処理業者に、様々な会社が依頼をしています。将来的にオープンにできるのなら、廃棄物を出す企業と処理する側がシームレスにつながることで、wikiのような情報共有のプラットフォームが可能になると思います。

 現在では廃棄物に関しては、拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)という考え方に基づいているので、廃棄物が不法投棄された場合、業者だけでなく生産者も共に罰せられる場合があります。行政指導も廃棄物を出す側に責任を求めます。 その面からも、処理委託契約や廃棄にともなうマニフェスト伝票、法対応をいつ、どこで、どのように行っているかをきちんと可視化しておく必要があります。

 クラウド環境ソリューションと別に、CSRでも新しい取り組みをされていますね。

 藤原 「CSR JAPAN」や「日刊おしえて!アミタさん」というサイトを運営しています。もともとの環境マーケティングという環境そのものを売りに使っていく攻めのための情報のサイトです。

 風力発電や太陽光パネルを製造しているようなB2B型企業が環境のマーケティングをしようとしても、一般消費者のような今まで付き合っていたのとは違うお客さんにターゲットアプローチしなければならない。その時の方法もチャネルもないので、そういったことが不得意な企業にサービス提供していこうという考え方です。

 「CSR JAPAN」は各社のCSRの情報を電子書籍の形で集約して、一覧できるサイトです。環境部門からCSR部門まで、数多くのお客様の情報をお預かりし、パートナーとしての企業を紹介したり仲介をするなどのサービスや、営業やマーケティングの代行業務をするなど、ビジネスとして拡大していきたいと考えています。

 ありがとうございました。



著者プロフィール

  • EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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