VRのビジネス利用意向は情報通信業以外では10%を超えるケースが少ない
VRのビジネス利用意向は、情報通信業以外では今後の意向も含めて10%を超えるケースが少なく、VRのビジネス利用は立ち上がりを迎えたばかりであることが判明した。また、利用目的に関しては、現在利用しているとした回答者ではマーケティング用途が多い(25.9%)のに対し、今後の利用意向者では技術訓練やトレーニング用(20.8%)、技術研究(16.7%)および設計・エンジニアリング(15.3%)が上位に挙げられ、現在採用しているユーザーと今後のユーザーとの用途の違いが明らかとなった。
他方、ARのビジネス利用はVR以前の段階にあり、現在はまだ揺籃期であると言える。実際、ARではビジネスでの現在利用者で「テレワーク時の会議用」が26.1%でトップだったものの、その他は「開発環境の開発と販売」関連が上位を占めた。また、今後の利用意向者でも「技術研究」(13.8%)と並んで「ARコンテンツ開発環境の開発と販売(ハードウェア)」が上位に挙げられた。これらのことから、ARのビジネス利用は実際のワークフローへの導入よりもコンテンツの開発等を利用目的とするケースが多く、標準化を伴う実際のビジネスでの利用はVRに遅れを取っている現状も明らかとなっている。
AR/VRのユーザー体験をいかにして拡大していくかが最初にして最大の課題
また、現段階ではAR/VRを自社ビジネス利用していないとした回答者にAR/VRの自社ビジネス利用阻害/懸念要因をたずねたところ、外注コストやROIの分かりづらさを上げる声が多く、コストに見合うだけのリターンが得られるのかを懸念する声が目立った。AR/VRはその特性上、体験内容とメリットを言語化することが難しいとされるが、実際の導入に当たってもこの壁をいかに克服するかという点が課題であることがうかがえる。
ただし、AR/VRを何らかの形で個人的に体験したことのある回答者はビジネス利用の障害要因などについて具体的に回答する傾向が強く、その点ではAR/VRのビジネス利用について「我が事化」を能動的に進めていると言える。そのため、今後の市場拡大に当たってはAR/VRのユーザー体験をいかにして拡大していくかが最初にして最大の課題になる。
IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューションのシニアマーケットアナリストである菅原啓氏は「顧客の業務に合わせた簡易体験デモ環境等を提供することを通じて『何ができるか』を明確にアピールしていくことが必要である」と結論している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2017年 国内AR/VR市場 企業ユーザー調査」にその詳細が報告されている。レポートではAR/VRのビジネス利用に関し、どのような業種や利用目的での採用ならびに採用意向が高いのか、およびAR/VRのビジネス利用に関しては何が懸念要素あるいは障害となっているのか等のアンケート調査の分析結果を掲載している。