ガートナーが2017年に実施した調査では、企業の84%が、カスタマー・エクスペリエンスへの投資は向こう1年で増加するだろうと回答している。ガートナーが発表した、今回の見解以外にも、顧客戦略の策定に当たるカスタマー・エクスペリエンス・リーダーが知っておくべきものには、次のようなポイントが含まれるという。
■2019年までにブランド保有企業の20%は、自社のモバイル・アプリを放棄する
多くのブランド保有企業が、モバイル・アプリの普及とカスタマー・エンゲージメントの成熟の度合いは予測を下回っていると感じている。サポートやメンテナンス、アップグレード、カスタマー・ケア、ダウンロードを促進するためのマーケティング・コストがかさみ、費用対効果(ROI)は当初の目算から外れてしまっている。
ブランド保有企業は、顧客がよく利用するFacebook MessengerやWeChatなどのコンシューマー・メッセージング・アプリを通じて彼らとコミュニケーションを取れるよう、プレゼンスを確立する投資を行っている。
■2022年までにあらゆるカスタマー・エクスペリエンス・プロジェクトの3分の2がITを活用する(2017年の50%から上昇)
デジタル・チャネルの数と共に、セルフサービスやデジタル・コマースにおけるインタラクションが増加する一方で、対人ベースや音声ベースのインタラクションが減少する動きも進んでいる。ITを使用したカスタマー・エクスペリエンス改善プロジェクトの件数は、着実に増える方向にある。ITを使用しないプロジェクトとしては、顧客とのインタラクションを担う従業員の採用や研修、統制、管理などが多くなる。
■2020年までに全B2B企業の30%が、主要な営業プロセスの少なくとも1つを強化するために人工知能(AI)を採用する
AIを使用して営業のビジネス・プロセスの効率および効果を高められるようになることから、潜在顧客やリードとのエンゲージメントにおけるコンバージョン率は最大で30%増加する可能性があると、ガートナーはみている。営業のさまざまな段階で迅速かつ正確なサポートを提供するAIは、大量のリードや案件、予測を処理しなければならない営業部門にとって、魅力的な選択肢の1つになりつつある。
■2020年までにあらゆるデータ・アナリティクス・プロジェクトの40%以上は、カスタマー・エクスペリエンスの側面に関連するものとなる
マーケティング、営業、デジタル・コマース、顧客サービス、ソーシャル・メディア管理、フィールド・サービスといった部門にわたり、データおよびアナリティクスは既に大きな存在になっている。しかし大多数の企業は、自社に対する顧客の態度について、全体像を把握できていないのが現状だ。ここで重要になるのは、店舗や部門、プロセス、製品に対する顧客の態度ではなく、企業全体に対する顧客の信頼度と、信頼し続けようとする彼らの意思になる。
■2020年までに拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)の没入型ソリューションが評価され、デジタル変革戦略の一環として大企業の20%で採用される
企業は、従業員や顧客、サプライヤーに対し、ディスプレイが小さい、視界が狭いといった制約に縛られずリアルタイム情報を取得して、仮想環境を体験し、ソーシャル・コラボレーションに参加する手段を提供できるようになる。消費者は既に、SnapchatのフィルタやFacebookの360度動画/写真など、何らかの形の没入型テクノロジを体験している。
ガートナーは、2月19日・20日に東京で開催している「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス サミット2018」、および英国・ロンドン(5月24~25日)と豪州・シドニー(6月18~19日)で開催する「Customer Experience & Technologies Summit」において、カスタマー・エクスペリエンスのトレンドに関するさらに詳細な情報を提供するという。