1. 市場概況――景況感の良さが追い風となり、ERP投資は堅調
2017年のERPパッケージライセンス市場は1,097億9,000万円(エンドユーザ渡し価格ベース)、前年比0.8%増と前年比ではほぼ横ばいとなった。
ただし、ユーザ企業のERP投資自体は堅調である。景況感が良いことが追い風となり、情報システムを見直す動きは続いている。特に、製造業の生産管理システムや流通小売業の販売管理システムなど、事業のコア業務に関わるシステムへの投資意欲は高い。
しかし、ERPパッケージベンダーの業績をみると明暗が分かれる傾向が見られる。ユーザ企業のニーズを獲得できたベンダーは順調に業績を伸ばしたが、逆に失速したベンダーも散見され、全体では前年並みとなった。ベンダーにより業績に好不調の差が開く傾向は昨年もみられた。ユーザ企業によって、ベンダーや製品は厳しく選択されていく傾向が強まっていると考える。
2. 注目トピック――ERPのクラウド化が進展し市場にも影響を与える見通し
ERPのクラウド化は2016年くらいまでは緩やかに進んでいたが、今年は明らかな進展が見られ、ユーザ企業ではクラウドが優先的に選択されるようになっている。こうしたトレンドの変化に対応し、クラウドを主体に提供しようとするERPベンダーも増えつつある。
ただし、クラウドによるサービス提供の場合、ベンダーの収益モデルが、初期導入時の一括売上から月額課金に変化するため、売上の変化の幅が小さくなる。今後、クラウド化が更に進めばERP市場の増減もこれまでとは異なり緩やかになる可能性がある。
3. 将来展望――2018年は前年比2.9%増の1,129億6,300万円と予測
2018年のERPパッケージライセンス市場では、ユーザ企業の高い投資意欲の継続が見込めるとともに、一部のERPパッケージベンダーでの業績回復が期待される。こうしたことから、2018年のERPパッケージライセンス市場は前年比2.9%増の1,129億6,300万円(エンドユーザー渡し価格ベース)に回復すると予測する。
この調査は、ERPパッケージベンダーを対象に、2018年4月~7月に実施されたもの。矢野経済研究所が発刊した「ERP市場の実態と展望 2018」に詳細が掲載されている。