会見では、KDDI 理事の藤井彰人氏、Scrum Inc.のアヴィ・シュナイアー氏、永和システムマネジメントの平鍋健児社長、Scrum Inc.の荒本実社長が登壇した。
パネルディスカッション形式で行われた紹介セッションでは、新会社の掲げる開発方法論の「スクラム」の経緯が語られた。
スクラムの源流は、日本のトヨタなどの製造業の開発プロセスに由来し、元々は経営学者であった野中郁次郎氏の論文に端を発し、そこから着想を得たアジャイル開発のエンジニア、ジェフ・サザーランド氏がソフトウェア開発方法論をしてまとめたもの。
今回のScrum Inc.に参画した平鍋氏はかねてからこの二人に着目し、2011年にはサザーランド氏を招聘、野中郁次郎氏とのジョイントのセミナーを開催するなどの関係づくりやスクラムの普及に尽力してきた。
KDDIは2013年に、グーグルから移籍した藤井氏の参加後、精力的にスクラムを導入し社内での開発に適用し、2015年の電力自由化に伴う新サービス「auでんき」のリリースに結びつけるなどの成果を生み出した。その後も、2016年のアジャイル開発センターの開設、2018年の「KDDI DIGITAL GATE」の開設などを経て、今回のScrum Inc.の設立にいたった。
スクラムのフレームワークは、スプリントという単位でプロセスを分割し、2〜4週間単位で区切り開発を進めていき、それを繰り返すことで製品を完成させていくというもの。顧客からのフィードバックに基づき計画と開発を短い期間で繰り返し、新しい機能を次々とリリースしていく。
米Scrum Inc.から今回参画した、アヴィ・シュナイアー氏は「日本の働き方に由来するスクラムは米国では普及しており、代表的な導入企業はAmazonだ。Scrum Inc.による導入の実績としては3M、AUTODESKなどがあり、製造業だけではなくJPモルガンのような金融業界でも導入が進んでいる」と語る。
また導入事例企業として、自動運転のソフトウェアを開発するTRI-ADのCOOである虫上広志氏は、「スクラムによる情報の共有・可視化やチームワークを活かし、新たなオフィスのレイアウトにも反映させる」と述べた。
藤井氏は、「KDDIとしては、今後5G、IoTに関連する開発プロジェクトの中にも貢献できると考えている」と述べる。
今回の設立により、これまで四半期ベースで開催していたセミナーや、導入支援のワークショップなどの開催回数を倍以上に増やすとともに、共同でScrum Inc.認定資格セミナーの開催およびスクラムコーチの派遣も増強していく考えだという。
■合弁会社の概要
- 社名: Scrum Inc. Japan株式会社
- 本社: 東京都港区
- 設立年月日: 2019年1月29日
- 事業内容: Scrum Inc.認定資格セミナーの開催、スクラムコーチの派遣、コンサルティング等
- 代表者: 荒本 実
- 資本金: 7,500万円 ※2019年3月下旬に合弁化の手続きが完了予定