IaaS/PaaSの効率的利用で外部サービスベンダーへの運用委託が増加
現在の国内市場では、従来はクラウドの利用に保守的な姿勢を持った企業においても、クラウドの利用が進んでいる。また、従来からクラウドの利用に積極的であった企業は、クラウドの利用範囲を拡大している。すなわち、多くの企業がクラウドファースト戦略に移行したことによって、クラウドを導入するシステム領域/ワークロードが拡大、多様化が進んでいる。
これまでクラウドを積極的に導入してきた先駆的企業は、新技術の評価や活用は自らが率先して実践してきた。一方、近年、クラウドファーストへ移行した企業は、クラウド利用によって得られる効果に強い関心を示すものの、アセスメント/構築から運用まで多くの支援をサービスベンダーに求めている。
また、先駆的企業であっても、クラウド、特にパブリッククラウドIaaS/PaaSを効率的に利用するために、外部サービスベンダーに運用を委託することが増加している。すなわち、マネージドクラウドサービスに対する需要が高まっている。
ユーザー企業はクラウドジャーニー戦略を支援するサービスベンダーを選定すべき
現在、ほとんどすべてのサービスベンダーは、マネージドクラウドサービスを強化している。一方、ユーザー企業の提案依頼(RFP:Request for Proposal)のスコープが特定のシステム領域/ワークロードに限定されることが多いことから、クラウドの適材適所と称しながら個別最適化に焦点を合わせた提案を行うサービスベンダーも存在する。
個別最適化を核とした提案は、目的の明確化といった点で効果はあるものの、システムのサイロ化を助長する危険性がある。また、ユーザー企業が経営戦略として取り組むべきクラウド活用の成熟度の向上、さらにはクラウドジャーニー戦略の立案、遂行の支援には結び付かない。
IDC Japan ITサービスのリサーチディレクターである松本聡氏は、「ユーザー企業は特定プロジェクトだけに焦点を合わせてベンダーを選定するのではなく、クラウドジャーニー戦略を支援するサービスベンダーを選定すべきである」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行した「IDC MarketScape: Japan Managed Cloud Services 2018 Vendor Assessment」にその詳細が報告されている。
調査レポートでは、国内マネージドクラウドサービス市場における主要ベンダーとして、アクセンチュア、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、富士通、日立製作所、IBM、日本電気(NEC)、NTTデータ、TISの戦略やサービス提供能力を分析し、ポジション評価やプロフィールをまとめている。また、ユーザー企業が、マネージドクラウドサービスベンダーを選定するときに留意すべき事項を提示している。
IDC MarketScapeは、特定市場におけるICTサプライヤーの競争力の適応度を把握できるベンダー分析モデル。調査方法として、定量的および定性的な評価基準に基づいた厳密な採点手法を用いている。調査結果は当該市場における各ベンダーの位置付けを示す、1つのグラフィックスによって図示される。
IDC MarketScapeは、ICTベンダーの製品とサービス、ケイパビリティ(製品/サービス提供能力)、戦略、さらには現在および将来の市場における成功要因を比較可能とした明確なフレームワークを提供する。ITバイヤーはこのフレームワークを利用することによって、ICTベンダーの強みと弱みを包括的に把握することができる。