「ビジネスニーズへの迅速な対応」は、特に大企業や中堅企業で高い回答率
調査では、ハイブリッドクラウドを「複数のクラウドサービスやプライベートクラウドなどを連携し、統合的に運用管理すること」として調査している。ハイブリッドクラウドの構築で重視する項目では、「ITインフラコストの最適化」「セキュリティの強化」「運用管理コストの最適化」「統合的な運用管理の実現」が上位となった。
ハイブリッドクラウド構築では、セキュリティの強化に加えて、運用管理も含めたITインフラコストの最適化が重視されている結果となった。次いで「ビジネスニーズへの迅速な対応」となっており、特に大企業(従業員規模1,000人以上)や中堅企業(同500~999人)で高い回答率となった。
デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応などを背景に、ビジネス機会を拡大するためにITリソースを迅速に提供できることが重視されていると言える。
オンプレミスITインフラでもパブリッククラウドサービスに近い使い勝手や機能が求められる
今後利用を増やすITインフラでは、「パブリッククラウドサービス」「プライベートクラウドサービス」「オンプレミスプライベートクラウド」が上位を占めており、パブリッククラウドサービスの利用意向は高い状況にある。
しかしながら、ワークロード別に見ると「ERM(Enterprise Resource Management)」「データベース」「電子メール/グループウェア」「ファイルサーバー」では、パブリッククラウドサービスに移行できると回答した割合が比較的高かった。
だが、これらのワークロードについて、今後のITインフラの利用意向を尋ねると、パブリッククラウドサービスに移行するとした回答はそれほど高くなく、必ずしも円滑に移行が進むわけではないとみられる。
一方で、パブリッククラウドサービスを利用中の回答者のうち、今後パブリッククラウドサービスからオンプレミスITインフラに移行する予定がある回答者は8割弱となった。
オンプレミスITインフラの利用を増やす条件としては、セキュリティの向上、容易な導入、PaaS(Platform as a Service)機能の統合提供、運用管理負担の軽減などが挙げられており、オンプレミスITインフラにおいてもパブリッククラウドサービスに近い使い勝手や機能が求められる結果となった。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ シニアマーケットアナリストである宝幸久氏は、次のように分析している。
「複数のクラウドを適材適所で使い分けるマルチクラウドの一般化を背景に、ハイブリッドクラウドを構築済みの回答者が増加しており、今後1年以内に構築する計画を持つ回答者も大きく増加した。一方で、オンプレミスITインフラに対する再評価も進んでおり、その刷新が求められていることも明らかとなった。今後は、クラウドの活用、オンプレミスITインフラの刷新、そしてハイブリッドクラウドの実現を念頭に置き、DXに対応したITインフラへと変革を進めることが重要である」。
今回の発表は、IDCが発行した「2019年 国内ハイブリッドクラウドインフラストラクチャ利用動向調査」にその詳細が報告されている。レポートでは、DXの進展やパブリッククラウドの普及に伴うITインフラの投資意向の変化や、ハイブリッドクラウドインフラストラクチャの利用動向、DXがITインフラ選定に与える影響を分析している。