ログラスは7月31日、会見を行い、シリーズBラウンドでの70億円の資金調達、AI予実分析レポートの提供開始、今後の事業戦略を発表した。同社は「良い景気を作ろう。」をミッションに掲げ、企業の業績向上や企業価値向上に必要なソリューションを提供している。今回の資金調達により、累計調達額は100億円に達した。
ログラスの布川友也CEOは記者会見で「日本は過去30年間経済が低迷しており、労働生産性の向上も停滞している。その背景には経営のブラックボックス化という課題がある」と指摘。同社は経営データの可視化と分析を支援するソリューションを提供することで、この課題の解決を目指している。
今回の資金調達では、Sequoia HeritageとALL STAR SAAS FUNDが共同リードインベスターとして参画。さらに、マサチューセッツ工科大学も投資家として名を連ねている。ALL STAR SAAS FUNDのマネージングパートナーである前田ヒロ氏は「EPM(エンタープライズパフォーマンスマネジメント)市場の成長性と、ログラスの優れた製品開発力、顧客からの高い支持が投資の決め手となった」と語った。
前田氏はEPM市場について「グローバルで現在75億ドル(約1.1兆円)規模であり、2029年には118億ドル(約1.8兆円)に成長すると予想されている」と説明。特に日本市場については「年間21.6%という驚異的な成長率を示しており、2023年に200億円台だった市場規模が2028年には倍以上に拡大すると予想されている」と述べ、市場の魅力を強調した。
ログラスは調達資金を主に2つの分野に投資する計画だ。1つ目は開発の強化で、新規事業開発やAI関連の人材採用、海外開発拠点の設立などを進める。2つ目はデリバリーの強化で、関西支社の開設やマーケティング・PR活動の拡大、M&Aなどを実施する方針だ。
AI予実分析機能の提供開始
会見では、新たにリリースした「AI予実分析レポート」機能についても発表があった。この機能は、生成AIを活用して多角的かつ正確な予実分析を瞬時に実行するもので、経営のブラックボックス化解消に向けた取り組みの一環だ。
布川CEOは「従来は人間が属人的に行っていた分析作業を、AIが多様な切り口で自動的に実行します。経営者はこれをクリックするだけで、自社の業績課題を簡単に発見・特定できるようになります」と説明した。
デモでは、営業利益の分析を例に機能が紹介された。部署別や科目別など、様々な切り口での分析結果がグラフと共に表示され、AIが自動で分析レポートを生成する様子が示された。さらに「掘り下げ分析」機能により、より詳細な分析も可能だという。
布川CEOは「この機能開発には1年以上の時間をかけ、何度もスクラップ&ビルドを繰り返しました。社内の経営企画出身の実務経験者とエンジニアの知見を掛け合わせ、他社に先駆けて生成AIの活用に取り組んだことが成功の要因です」と語った。
オービックビジネスコンサルタントとのパートナーシップを発表
ログラスは同日、オービックビジネスコンサルタント(OBC)とのパートナーシップ契約も発表した。両社は、ERPシステムの過度なカスタマイズによる障害を防ぐため、標準化を推進する「Fit to Standard」アプローチを共同で推進していく。
具体的には、OBCの「奉行V ERP クラウド」とログラスの経営管理ソリューションをAPI連携させ、予算策定と実績管理をシームレスに行える環境を提供する。さらに、OBCが持つ全国約3000社の販売パートナー網を活用し、両社のソリューション拡販も進める計画だ。
布川CEOはOBCとの提携について「ターゲット企業の類似性や、サービス間の高い連携性がパートナーシップの決め手となりました。OBCが推進するクラウド戦略とも合致しており、お互いにシナジーを生み出せると判断しました」と説明した。
今後の展開
競合との差別化について質問を受けた布川CEOは、国内競合に対しては「高度なUI/UXとレスポンスの速さが強み」と述べた。一方、海外競合に対しては「国内にカスタマーサクセス組織があり、日本語で対応できること、エンジニアが即時対応できることが差別化点」と説明した。
ログラスは今回の資金調達と新機能開発、パートナーシップを通じて、短期的には「xP&A戦略」、中長期的には「AI ERP戦略」を推進していく方針だ。xP&A戦略では、経営計画や分析をあらゆる部門・領域・業界に展開。AI ERP戦略では、AIを活用した高度なリソースプランニングの実現を目指す。
布川CEOは「これまでシリーズAで市場シェアナンバーワンを実現し、6倍の成長を遂げてきた。今後はAIと先進技術を駆使し、より多くの企業の経営改革を支援していきたい」と意気込みを語った。
同社は2027年4月までに、複数カテゴリーでのナンバーワン獲得、導入社数1千社超え、製品・サービス数20以上、社員数500名超を目指すという。