KDDI、KDDI総合研究所、Jij、QunaSys、早稲田大学の5者は、量子コンピューターの技術開発と事業化に関するパートナーシップ締結に合意した。
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同取り組みでは、通信分野で量子コンピューターのユースケースの探索や創出に取り組んできたKDDI、KDDI総合研究所の知見と、業界の研究開発をリードし、量子計算で早期に実用化が期待される最適化や化学計算の分野で強みを持つJij、QunaSys、早稲田大学の知見と要素技術を統合。産業技術総合研究所の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)が構築を進めている、量子・古典ハイブリッドのテストベット環境と連携していく予定だとしている。
また、国内に限らず海外への展開も視野に入れているという。SIP3量子は現在、欧州との連携が進んでおり、そのコネクションを通じて欧州の量子関連企業への参画を呼びかけていくとのことだ。
今後、次の取り組みを進め、量子コンピューターのユースケースの拡大と、AIと量子コンピューターの融合を加速させ、量子コンピューターの能力を活かした新しい社会の実現に貢献していくとしている。
①ユースケースの開拓
- 量子コンピューターを活用できる産業分野を特定するため、早期に実用化が期待できる最適化や化学計算の分野を中心にユースケースを開拓
- 最適化の分野では、KDDIのコア事業である通信に関連して、通信品質や基地局のエネルギー管理の最適化などを想定。また、通信以外の分野では、物流の経路や製造業における生産計画の最適化などを想定
- 化学計算の分野では、次世代の再生可能エネルギーに向けた材料開発などを想定
②AI・量子共通ビジネスプラットフォームの開発
量子コンピューターを社会に実装していくためには、古典コンピューター上で社会的な実装が進むAI基盤から、量子コンピューターに利用者をシームレスにつなげ、古典・量子コンピューター間の境目を感じさせない環境の構築が必要だという。今後、次のような機能を提供するAI・量子共通ビジネスプラットフォームの構築を目指し、開発を加速させていくとしている。
提供する機能(想定)
- 量子コンピューター上のアプリケーションの開発者と利用者を分け、古典コンピューターのAPIのような仕組みや、利用者向けのアプリケーションポータルを用意することで、量子計算に詳しくない利用者でも容易に量子コンピューターの計算能力を活用できる機能
- AI基盤と量子計算基盤は年々進化すると考えられるため、その進化によって生じる技術的な変化や差分をプラットフォーム側で吸収し、アプリケーションごとに最適な計算資源を選択できる機能
![今後の取り組みの概要[画像クリックで拡大]](http://ez-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/21543/21543_2.png)
各者の役割
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KDDI
- AI・量子共通ビジネスプラットフォームの構築
- GPU基盤の提供
- 産業課題ユースケースの提供
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KDDI総合研究所
- AI・量子共通ビジネスプラットフォームの要素技術提供
- SIP3量子を通じたハードウエア企業との連携
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Jij
- 国内外における最適化領域のユースケース開拓や知見の提供
- 最適化アルゴリズムの開発
- 量子コンピューター向けソフトウエア統合開発環境の提供
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QunaSys
- 化学計算領域のユースケースや知見の提供
- 化学計算アルゴリズム・パッケージの提供
- 量子アルゴリズムの計算資源消費量に関する知見の提供
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早稲田大学
- 量子最適化計算の効率化・高精度化アルゴリズムの知見の提供
- 量子計算技術の前処理・後処理法の知見の提供
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