伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)によれば、大学内に存在するサーバ約850台、業務用端末約7,000台をクラウド化するのyは、国公立大学としては初めての例。
静岡大学では2007年より、グリーンIT、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)、BCP対応、ITコンプライアンス、コストの最小化、J-SOX対応など様々な課題に対応したシステムの刷新を検討してきたという。
2009年までの3年間に環境負荷及び投資コストについての詳細な調査を行ったところ、大学内ネットワークに接続されている情報機器は、パソコン約7,000台、Webサーバ552台、研究開発用サーバが300台以上存在し、サーバや端末は組織ごとに調達しているためリソースがうまく活用できていないこと、また、IT機器がキャンパス内に分散設置されていたため、大容量空調設備や大規模受電設備、多数の無停電電源装置などが存在し、運用環境においても効率化できることが判明。
IT機器全体では全学の15%に相当する、年間233万kWhの電力が消費され、885トンのCO2が排出されていると推定。
このたび、学内情報システムを全面的にクラウドコンピューティングに移行することで、従来のシステムと比較して2013年度までに消費電力90%以上、IT投資コスト80%以上の削減を見込んでいる。
システム構築は、NTT西日本静岡支店とCTCが担当。
キャンパス外のデータセンターに静岡大学専用のPRCCを構築し、キャンパスとは10Gbpsの大容量光ケーブルで接続。メール、認証、シンクライアント制御、人事、給与、会計、学務、遠隔Webなどの基幹システムを中心に、学内で稼働していたサーバ、スーパーコンピュータなどの全ての機器の移行を実施し、その結果、従来のサーバ室、大型のエアコンなどは全て廃止した。
ホームページやSNS、ブログ、研究用サーバなどについては一般向けサービスを行う PBCCを想定。処理能力や情報セキュリティなど多くの項目について調査・検証を行った結果、Amazon EC2など世界中の数十種類のクラウドサービスから最適なものを選択して使用する形態に変更。費用は1台のサーバにつき2,000~4,000円/月となり、従来の1/10~1/50以下のコストになると想定され、2013年までに、学内のサーバ約500台をPBCCでの運用に移行予定だという。
また、学内にある7,000台のパソコンのうち、1,100台をシンクライアントに置き換え、使用時間以外はシンクライアントを完全に電源オフにする装置を設計、運用も確立し年間総合電力を低減するように工夫。2013年までにシンクライアントは2,000台にまで拡張予定で、残りの5000台は、省電力PCに随時移行していくとのこと。
さらに、教職員全員のパソコンデータのハードディスク内のデータを全て移行できるクラウドストレージを整備。現状では1人あたり20GBを割り当ていたが、2013年までに80GBまで拡張する。これにより、静岡大学に一度でも在籍した教職員は退職、転勤後も続けて、クラウドストレージを利用でき、生涯を通じ、自身のデータを一元管理することができるという。
なお、今後、静岡大学ではクラウドコンピューティングの導入を支援する『日本アカデミッククラウドコンピューティング支援センター』を設立し、プライベートクラウドとパブリッククラウドの棲み分け、パブリッククラウドサービスの選定及び運用支援を行っていく予定だという。