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「楽楽精算」でAIエージェント機能(β版)を提供開始──精算書の作成を自動化

 ラクスは12月1日、経費精算システム「楽楽精算」において、AIを活用して経費精算を自動化する新機能「楽楽AIエージェント for 楽楽精算」β版の提供を開始。同日、メディア向けに体験会を開催した。

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 同社 楽楽クラウド事業本部 楽楽精算事業統括部 事業統括部長の宮川拓也氏は冒頭、日本の生産人口の推移データを示し、今後40年間で生産人口が35%以上減少するという推計を提示。この人口減少が避けられない中で企業が国際競争力を維持していくためには、「生産性の向上が必須」であるという認識を示し、その実現には経費精算のような利益に直結しない補助的な業務である「ノンコア業務の圧縮」が不可欠であると訴えた。

 同社はこれまでにも「楽楽精算」で作業時間を80%削減、「楽楽明細」で96%削減、「楽楽請求」で60%削減といった業務効率化に貢献してきたが、近年のAI技術の進化を受けて、「AIを活用すれば、さらに劇的な改善ができる」という確信のもと、新機能の開発・投入に至ったという。

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株式会社ラクス 楽楽クラウド事業本部 楽楽精算事業統括部 事業統括部長 宮川拓也氏

 AIエージェント開発課 課長の石田博章氏は、今回搭載されたAIエージェント機能について解説した。従来の生成AIが、人が与えた指示に対し結果を回答するのに対し、AIエージェントは、ヒトからの指示に対しAIが「判断」し、次のタスクの「実行」まで行う能力を持つ点が、大きな違いであると説明。この自律的な判断能力が、複雑な経費精算業務においても自動化の可能性を広げるとした。

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株式会社ラクス 楽楽クラウド事業本部 楽楽精算事業統括部 AIエージェント開発課 課長 石田浩章氏

 楽楽AIエージェント for 楽楽精算の初期リリースで目標としたのは、経費精算の業務フローにおいて、最も人の作業が残っていた「申請書作成の自動化」であり、この申請者による精算書作成業務を限りなくゼロにすることを目指したという。体験会では、外部研修の参加にともなう宿泊費(コーポレートカード決済)と研修費用(現地支払い)という2つの領収書を処理するケースが紹介された。

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 従来の楽楽精算では、領収書を撮影することでAI-OCRがデータを読み取ることで効率化されていたが、その後のプロセスにおいて、事前申請データとの紐づけやクレジットカード明細との紐づけ、および勘定科目などの入力作業が「人の作業」として残っていた。

 この残された手作業をAIエージェントによって自動化する。申請者がスマートフォンアプリから処理したい領収書を選ぶだけで、AIが「領収書データ」に紐づく「事前申請伝票」や「クレジットカード明細」を自動で紐付け、「過去の申請データ」も活用しながら、精算伝票を作成する。申請者は、AIが提案した紐付け情報を確認し、一時保存された精算書の内容を確認・修正した後、「申請する」ボタンを押すだけで済むという。これにより、入力の手間や、入力項目の迷いが激減するとされた。

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 この機能について、宮川氏は、事前申請や過去の伝票データがある場合は高い精度が期待できる一方、情報がない場合は精度が落ちる可能性もあるというAIの限界を認めた。その上で、同社独自の強みである「申請ルール」機能をAIエージェントと連動させる方法を提示。AIが申請内容を自動で提案し入力ミスや工数を削減するだけでなく、申請ルール機能が「申請内容が社内ルールに沿っているかを自動判定」することで、ルール違反を自動でブロックし、申請の正確性を高められるという。この「AIエージェント」と「申請ルール」の組み合わせこそが、「楽楽精算」ならではの業務改善であり、承認者や経理担当者のチェック作業の手間も削減されると強調された。

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 楽楽AIエージェントの開発は、2025年4月中旬に開発が決定され、5月には専門組織が設立され、そこから約半年後の12月1日にベータ版提供に至っている。石田氏は、この異例のスピード開発を支えた要素として、まず開発プロセスの変革を挙げた。ラクスが従来取られてきた縦割りによるウォーターフォール型開発から脱却し、「どの業務でどんな課題を解決するか」を起点に、作りながらPDCAを回すスタイルに変更。このプロセスで、2.5ヵ月で5バージョンものプロトタイプが作られ、社内レビュー会は23回実施し、100社以上の顧客にモックアップを見せ、フィードバックを得てきた。

 さらに、組織体制についても、事業部長直下に「AIエージェント開発課」(4名)を配置したことが、スピード実現の鍵となったという。エンジニアを開発本部から事業部門へ異動したことで、営業やカスタマーサクセスといった顧客接点を持つメンバーと近接。成果物を最短でユーザーへ提供することが可能になった。

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 今後のロードマップとして、宮川氏は3つのフェーズを示した。

  • フェーズ1(申請書作成の自動化):2026年にはAIエージェントオプションとして有償オプションリリースを目指す。長期的には、「ユーザー操作ゼロで、精算書の自動作成」や「出張精算等への申請種別拡大」といった機能拡張を計画。β版は一部の顧客に無償で提供し、機能検証と精度向上を図る期間とする
  • フェーズ2(承認プロセスの自動化):2026年以降に、設定に応じた承認プロセスの自動化・補助機能のリリースを検討
  • フェーズ3(ガバナンス強化):2027年以降に、領収書の二重申請機能の強化や、領収書画像の不正・修正の検知機能などのリリースを検討
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 なお、AIエージェントの提供が有償オプションとなる背景については、LLM(大規模言語モデル)の利用による原価負担があるためと説明。ただし、有料版はユーザー数に応じた固定料金を想定しており、宮川氏は「(顧客が)費用対効果を感じられる価格設定としたい」と述べた。また、「楽楽」ブランドでの横展開を見据え、「楽楽AIエージェント for 楽楽精算」という名称を採用したという。

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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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