2026年4月27日、ClickHouseは日本法人の設立とともに、AIオブザーバビリティプラットフォーム「Langfuse」を正式提供すると発表した。
同日、都内で日本法人設立記念パーティーが開催されて説明会が行われた。ClickHouseの日本法人 代表取締役社長を務める金古毅氏が「われわれが提供しているのは、データを記録から“動力”へと変えていくためのエンジンだ。日本のAIイノベーションを足元から支えていき、その競争力を再定義していく」と述べると、同社を支援するジャパン・クラウド・コンサルティング 代表取締役社長 福田康隆氏は「(ClickHouseは)AIドリブンの時代における圧倒的な製品力をもち、優秀な経営陣が揃っている。日本での成功を確信している」と話す。
また、日本法人設立記念パーティーにあわせて米ClickHouseから3名の経営陣が来日。ClickHouse CEOを務めるアーロン・カッツ氏は、「われわれは、数年のうちにグローバルリーダーの1社となるだろう」と自信を見せた。
同社 CEO アーロン・カッツ(Aaron Katz)氏
同社 CTO アレクセイ・ミロヴィドフ(Alexey Milovidov)氏
ClickHouseの歴史は10年前に遡ることができ、2016年にClickHouseのOSS版が提供され、2021年に米国法人が設立されている。2022年より「ClickHouse Cloud」を提供すると、昨年にはユーザー数が2,000社に上る勢いだ。同社が重要視するのは、データドリブン経営を推進する上でのデータ分析にともなうレスポンスやスケール、コストといった、AI時代に突入した現在でも企業が直面している“データ課題”に対応することだと、ユーリ・イズライレフスキー氏。下図のように競合視するSnowflakeとDatabricksとの比較図を提示し、大規模データに対するレイテンシーとコストパフォーマンスにおいて優っていると強調する。
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特にAI活用のためには動的なデータ分析環境が必要だとして、「1秒前のデータがAIの知能を左右する時代だ。とにかくデータが新鮮であることが重要であり、鮮度の落ちた燃料(データ)ではAIの真価を発揮することは難しい。AI時代のデータスタックを支える基盤こそがClickHouseだ」とアレクセイ・ミロヴィドフ氏は説明した。
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実際にClickHouseを活用することで、Trip.comではクエリ応答速度を最大30倍に改善しており、eBayでは最大30倍のデータ圧縮に成功しているという。システム障害にともなう減収リスクへの対策、高額なコストをかけずに膨大なデータを用いた分析を実現するなど、ビジネスに資するプラットフォームだとする。
「Trip.comやeBayはもちろん、日本企業のユーザーも増えている。日本は、米国に次ぐ最大級のエンタープライズ市場だ。モビリティや製造・IoT機器など、現場から発生する膨大なデータが存在し、正確なデータ品質を求める品質管理の文化も根づいている。日本国内におけるAIインフラへの投資が8000億円超に達する中、われわれは日本で事業展開を行う」(金子氏)
既にClickHouseは、3大クラウド(AWS、Azure、Google Cloud)の東京リージョンでの提供はもちろん、オンプレミス版も提供されている。また、日本法人の設立にともないパートナープログラム「HOUSE MATES」を開始し、下図のように3階層でのランク制度が整備される予定だ。販売実績や認定資格者の人数などによって、パートナー各社が位置づけられる。
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さらに日本でも「Langfuse」が正式提供されることも発表された。Langfuseは、AIエージェントやLLMアプリケーションの挙動を管理・改善するもので、ClickHouseと組み合わせることでリアルタイムでの運用改善を目指すものだ。まずは、AWSの東京リージョンから提供される。
なお、同日開催されたClickHouseの説明会には、日本のユーザー企業としてマツダとフリーが登壇した。
マツダは全社的なAI活用にともない「MAXプロジェクト室」を設立しており、製造現場から営業、バックオフィスなどの多岐にわたる全社的なデータ活用ニーズに応えられるデータ基盤を模索していた。IoT機器から発生したデータをデータレイクに流し込み、データウェアハウスからデータマートを作成している。この一連のフローにおいて、データエンジニアとデータサイエンティストがClickHouseを用いているとのことだ。MAXプロジェクト室リーダーの吉岡正博氏は、「2016年頃からビッグデータに関するHadoop系の分散ソリューションを導入したが、大量データの蓄積と分析では異なる技術が必要だと認識した。さまざまな技術を調査する中、カラムナデータベースの重要性に気づき、ClickHouseを見つけた」と話す。
同社では2018年にClickHouseを検証しており、大量データを迅速に検索できることに加えて、高い圧縮率で蓄積可能な点を評価して採用したとのことだ。「われわれはOSS版のClickHouseを利用しているが、一度も障害が発生していない。一方、セキュリティ担保のためバージョンアップしていく中、圧縮標準の変更にともない圧縮率が変わったという点では困っていることもある」と吉岡氏。ClickHouseを長年にわたり利用してきた中での使い心地について率直に述べた。
また、フリーではAIアプリケーションの品質などをリアルタイムで監視・分析するための「LLM Observability」を推進しており、同社が提供する「まほう経費精算」においてLangfuseを利用している。Datadog LLM ObservabilityやArize Phoenixと比較検討した際、セキュリティレベルの高い情報を送信できたり、プロジェクト単位でのアクセス制御ができたりするなど、セルフホスト型で機微な情報を安全に管理することのできるLangfuseを導入したとのことだ。同社 SRE部 鈴木嘉恵氏は「Langfuse v3がオーガナイゼーション単位でのアクセス制御などに対応したことからアップグレードを実行したかった。OLAPデータベースであるClickHouseが推奨コンポーネントとされていたため、運用やコスト面などを考慮してClickHouse Cloudを導入した」と説明する。
監査ログを取得できたり、国内リージョンでのデータ管理が可能だったりと、セキュリティを中心とした要件を満たしていたことが決め手になったという。また、運用負荷が軽減される点でも、コストを十分に回収できると考えたとのことだ。今後、フリーでは他のプロダクトにおいてもLangfuseを展開する予定だとした。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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