【米現地レポ】Snowflake、エージェンティックAIの“制御”にフォーカスした新機能を続々発表
「Snowflake Summit 26」基調講演2日目 レポート
米Snowflakeは米国時間6月1日から4日にかけて、年次カンファレンス「Snowflake Summit 26」を米・サンフランシスコにて開催している。カンファレンス2日目に行われた基調講演では、企業がAIと自社データを統合し、ビジネスの意思決定や業務プロセスを自律的に支援する「Agentic Enterprise」の実現に向けた、新たな機能群が続々と発表された。
Snowflake 製品担当プレジデント兼共同創業者 Benoit Dageville氏は講演冒頭、AIエージェント時代におけるシステムアーキテクチャ基盤の重要性が増していることを指摘。企業が過去に直面してきた課題として、構造化データと半構造化データが異なるシステムに分断される“データのサイロ化”を挙げると、「このサイロ化がシステムの拡張性を制限し、一貫したガバナンスの維持を困難にしていた」と述べる。
そして、これらの課題を解決するためにSnowflakeは、コンピュートとストレージを完全に分離したアーキテクチャを構築し、すべてのデータとワークロードを単一のガバナンスモデルの下で管理するプラットフォームを提供してきたという。
つづいて登壇した製品担当EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)のChristian Kleinerman氏は、Agentic Enterpriseのビジョンを具現化する中核機能「エージェンティック・コントロールプレーン」について説明した。
同機能は、エンタープライズデータへの接続、コンテキストの提供、ガバナンスの適用、システム間でのアクション調整などを担う、新たなレイヤーとして位置づけられる。開発者向けのコーディングエージェント「Snowflake Cortex Code」およびナレッジワーカー向けのパーソナルAIエージェント「Snowflake Intelligence」の2つから構成されており、今回これら主要機能の名称変更を発表。Cortex Codeは「Snowflake CoCo(以下、CoCo)」に、Snowflake Intelligenceは「Snowflake CoWork(以下、CoWork)」に名称が変更され、役割をより明確化した。
CoCoは、デスクトップ環境向けの「CoCo Desktop」が新たに追加されるほか、VS CodeやMicrosoft Excel、Claude Codeプラグインへの拡張機能も追加された。これにより、どこからでもシームレスに開発できる環境を提供するという。
トランザクション処理の領域では、SnowflakeのフルマネージドPostgresサービス「Snowflake Postgres」において、データミラーリング機能が導入されることが明らかになった。これにより、Postgresデータベース上の変更が1分未満でSnowflake側に複製され、OLTP(オンライントランザクション処理)とOLAP(オンライン分析処理)の連携にともなう遅延が解消されるという。さらに、ハイブリッドテーブルを扱う「UNISTORE」の最適化も行われ、レイテンシーとスループットが大幅に改善されると強調された。
Kleinerman氏は続けて、データ基盤の相互運用性とガバナンスに関する新たなソリューションについても詳述。データのサイロ化を解消するための取り組みとして、オープンなデータフォーマット「Apache Iceberg v3」の一般提供サポートや、「Snowflake Storage for Apache Iceberg Tables」を発表した。さらに、オープンソースのデータカタログである「Apache Polaris」を基盤とする「Snowflake Horizon Catalog(以下、Horizon Catalog)」も拡張され、データを複製することなく外部エンジンとの間で、双方向の読み書き(Read & Write)が可能になったことを強調する。
Horizon Catalogは、メタデータコネクタを活用してPostgreSQL、SQL Server、Tableau、Power BIなどの外部システムから情報を自動的に同期し、データ資産全体のユニバーサル検索を可能にする。これに関連して、AIが組織のデータ資産に対して誤った推論を行うという課題を解決するため、Horizon Catalogでコンテキストを管理するための「Horizon Context」が発表された。
これにより、データアナリストはデータがどのように利用され、信頼され、更新されているのか、そのビジネスコンテキストを統合し、より接続性の高いデータビューを得られるようになるという。「Semantic Studio4」により、SQLの専門知識がなくとも共通のビジネスロジックを定義でき、「Semantic View Autopilot」によって(Horizon Contextによる)コンテキストを継続的に保持するためのセマンティックビューを自動生成し、改善していける。
また、Horizon Contextとあわせて発表された「Cortex Sense」は、これらのメタデータを自動的に“AI向けのコンテキスト”に変換する役割を担う。これにより、CoCoやCoWorkといったエージェントの応答精度が大幅に向上し、AI駆動の意思決定がより信頼できるものになるとしている。
AIエージェントの自律性が高まる中で懸念される、セキュリティリスクに対しても、Kleinerman氏は包括的な対策を提示した。その一環として、AIエージェントごとに個別の認証を行い、不正なアクセスや予期せぬ動作を防ぐ「Agent Identity」機能を新たに提供するという。また、「Trust Center」機能の拡張により、組織がAIシステムのセキュリティ状態を継続的に監視し、ランサムウェアの侵入、データの持ち出しなどを防止する異常検知機能を強化するとのことだ。
講演の中盤には、Snowflakeのプラットフォームを活用してビジネス変革を推進する顧客事例が紹介された。Under ArmourのデータおよびAI最高責任者(Chief Data and AI Officer)であるPatrick Duroseau氏は「組織全体で統一された見解をもつために、データサイロを解消し、信頼できる単一の情報源を構築することが不可欠であった」と語る。
さらに、Samsung Electronicsのコーポレートエグゼクティブバイスプレジデント Jung Suh氏は、主力製品の発売時における膨大なデータ処理において「従来の手動レポート作成では市場への対応が遅れる課題があった」と振り返る。そこで同社は、需要の変動に応じた在庫の再配分や予算の移行を自律的に提案・実行するアクションエージェントを導入し、既存のダッシュボードにAIを追加するのではなく、業務プロセスの中核から働き方を根本から変革していると説明した。
Kleinerman氏はさらに、コンピュートリソースの最適化についても新たなアプローチを発表した。クエリのインデックスやクラスタリングを自動調整する「Snowflake Optima」や、ワークロードに応じてリソースをリアルタイムに自動最適化する「Adaptive Compute」により、手動のチューニングなしで分析処理を高速化できるという。
また、フルマネージドGPU環境で基盤モデルを独自データに合わせてカスタマイズできる「Cortex Training」も発表され、企業はコストを抑えながら自社専用の高精度なAIモデルを学習させることが可能になったとした。
同氏はさらに、1日目の基調講演に登壇したAnthropicとの戦略的パートナーシップの拡大に言及し、ClaudeがSnowflake内に安全に統合されることを強調。企業は外部環境へデータを移動させず推論機能を利用でき、Claude Marketplaceを通じた調達プロセスも簡素化されるという。
これと連携するCoWorkの新機能として、構造化データと非構造化データを横断して多段階の推論を行う「Deep Research」や、ユーザーの行動を学習する「User Memory」を発表。さらに、Google DriveやSlackなどの外部ツールと直接連携する「MCP(Model Context Protocol)コネクタ」も発表された。
これらのMCP機能は、Snowflakeが先日発表したNatomaの買収計画を基盤とするもの。Natomaのエンタープライズ向けMCPプラットフォームは、企業システムや各種ツールをまたいで動作するAIエージェントに対し、安全な接続性やガバナンス、ユーザーのアイデンティティに基づく認可(Identity-Aware Authorization)・監査性を提供し、企業環境における安全かつ統制されたAI活用をサポートする。
基調講演の終盤、Kleinerman氏は「テクノロジーが『何を実現できるか』を問う時代から、『どのように実業務に活用するか』を問う時代へと既に移行している」と総括する。企業がガバナンスやセキュリティに対する懸念を抱くことなく、組織内のすべてのユーザーがAIの恩恵を十分に受けられる環境を提供することがSnowflakeの使命であると強調し、セッションを締めくくった。
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