『もしもし下北沢』は、毎日新聞の土曜朝刊で49回連載された小説を単行本化したもの。書籍は9月24日に1,575円に発売、電子書籍版は10月1日から1週間900円で、その後1,200円での配信となる。
初の電子書籍リリースにあたり、毎日新聞社取締役・コンテンツ事業本部長の長谷川 篤氏は、「新聞版の連載に掲載した、大野舞氏のイラストを、すべてカラーで書籍に入れ込むとなると、かなり高価になってしまう。そこで枚数や印刷の色数などに制限のない、電子書籍版を作ることにした。毎日新聞は紙媒体を主とする会社であるから、これを機にすべての書籍を電子化する方向に踏み切るわけではない。その都度必要なときに、印税や契約を含めて、作家との話がまとまったら行う。その際のルールもまだ定めていない。配信媒体については、当面iPad、iPhoneだけだが、今後はパソコンや他のスマートフォンなどあらゆる端末を想定している」と述べた。
著者のよしもとばなな氏は、今回の電子書籍化についてこうコメントした。
「大野さんのイラストが全部入ることや、サイトと連動できることがうれしい。10月半ばに桜井章一さんとの対談が追加されてアップデートされるが、新聞版ではカットされる部分があっても、電子書籍ではすべて読んでもらえる。とにかくiPadに触りたいとか、新しいことをしてみたいという気持ちから取り組んだ。iPhoneやiPadなど新しいものが好きな人たちに、アプリの1つとして楽しんでいただけたらいい」
今後の著者としての電子書籍への取り組みについては、「しばらくは本当に欲しい本は紙の書籍で買うだろうし、電子書籍を見るデバイスも条件によって(長所・短所が)さまざまなので、落ち着いてやっていきたい。Apple Storeでは次々に新しいものがリリースされるため、たとえば電子書籍をもっと出すなどして、私の名前で検索されるようになったりしなければ、(1冊出したくらいでは)埋もれてしまうだろう」と慎重な姿勢を示した。
記者会見時、公開されたのは書籍のカバーのみ。電子書籍の開発・制作を請け負った、株式会社クロスデザイン代表取締役の黒須信宏氏は、イラストの表現方法が注目される今回の電子書籍について「自社開発のソフトをカスタマイズして対応した。テキストのレイアウトは書籍と同様かなどの体裁は、10月1日にリリースされるものを見て欲しい」とのこと。