業務アプリの認証や権限管理を担う基盤を提供開始
VALANCEは2026年11月4日、企業向けAI Native業務OS「VALANCE」を正式にリリースする。AIが生成した業務アプリを、認証や権限管理、セキュリティといった裏側の仕組みごと本番業務で使えるようにする基盤である。クラウドに加え、オンプレミスでも提供する。
同社は2025年7月14日に設立された。代表取締役CEO 渡邉俊氏はアクセンチュアを経て、freeeで専務執行役員CBOを務めた人物だ。渡邉氏は、取締役COO 山口公大氏、CMO 指田直孝氏とともに取材に応じ、製品の仕組みと事業の方針を説明した。
渡邉氏は、この10〜15年は「システムに人が合わせる」やり方が主流だったと振り返る。人に合わせたシステムをSIや受託開発で作れば数千万円から数億円かかり、中小企業には現実的ではなかった。大企業は高額なERPを導入して業務に合わせられるが、安価なSaaSは汎用的で機能が合わない。VALANCEは、この間にある中堅・中小企業向けのカスタム開発の領域を対象にする。
VALANCEによると、AIの進化で業務アプリそのものは作りやすくなった。一方、会社の業務で使い続けるには、認証・権限管理、セキュリティ、監査ログ、データベース設計といった非機能要件への対応と、運用開始後の保守が必要になる。AIにここまで任せた場合、気づかないうちに脆弱性を抱えたアプリができることがある。紙やExcel、既存システムに散らばった業務データを、AIが扱える形に整える作業も必要になるという。同社はアプリを「作る」ことに加え、「安全に使い続ける」ことと「データを整える」ことを課題に掲げる。
3つの層で構成し、VALANCEは下の2層を担う
VALANCEは3つの層で構成する。最上層は、ユーザーが実際に使う業務アプリの層となる。ClaudeやOpenAI Codex、Geminiなどのエージェントが画面側を作る層で、渡邉氏はVALANCEがこれらと競合せず共存する位置にあると説明する。業務アプリはZIPファイルまたはGit連携で取り込む。標準搭載の「VALANCE Agent」は、社内ドキュメントを横断的に検索し、回答を生成する。
中間層のVCA(VALANCE Custom App、カスタムアプリ基盤)は、AIが作ったアプリを載せる土台となる。認証・権限管理、ログ・監視、API管理といった共通機能を備え、MCPなどの接続口と開発ガイドも用意する。購買、販売、在庫、会計・請求、人事など、あらかじめ用意したモジュールを組み合わせて、アプリをインフラごと構築する。運用開始後は、脆弱性チェックやエラー対応に加え、AIエージェントによる保守も行う。
最下層のCoreは、社内に散らばるデータを集めて構造化する基盤である。カスタムOCR、RDB、Vector DB(RAG用)、ファイルストレージ、データマッチングなど、従来のERPが持っていた基礎機能をまとめた。書類をスキャンすると、AIが証憑を処理し、取引同士を紐付けてデータベースを構築する。
渡邉氏は、事業の中心はVCAとCoreの2層で、最上層にもプロンプトから簡易的にアプリを作る機能はあると話す。業務で使う画面と裏側のAI基盤を分けたヘッドレスな設計を採用しており、各社がAIで作ったアプリを取り込めば、セキュリティや保守を個別に構築せずに使える。土台にはAWS Serverlessを使い、IaaS(AWSやGCPなど)とSaaSの中間に位置するAI駆動型の開発プラットフォームだと渡邉氏は説明する。
バックエンドの要件を事前に解決し、開発期間は約5分の1に
渡邉氏によると、画面周りの開発は生成AIで十分な品質に達した。一方、法人向けにバックエンドまで作る場合は、OSSライセンス違反や権限管理(RBAC)、セキュリティ、データベース設計といった非機能要件で、致命的なリスクが生じるという。VALANCEは、この部分をパッケージ化し、あらかじめ解決した形で提供する。
同社は、インフラ構築の工程がなくなり、実装やテストもAIエージェントが担うため、開発期間は従来のウォーターフォール型の約5分の1になると説明する(同社比)。渡邉氏は「要件定義や設計の能力は、今後さらに重要になる」と述べ、現場の業務を知るコンサルタントやSIerが上流を担い、実装をAIとVALANCEで自動化する分担が進むとの見方を示した。
ノーコードツールやAIエージェントを組み合わせてデータベースや認証基盤まで作る場合、上級エンジニアのスキルが必要になる点を、渡邉氏は課題に挙げる。実際に、ノーコードツールや生成AIで作ったアプリの乗せ換えの相談が増えているという。相談者には、バックエンドの権限管理やセキュリティの安全性に不安を持つ非エンジニアが多い。外部のフリーランスに作ってもらったアプリを、納品後に保守できずブラックボックス化した例もある。
セキュリティ面について、同社は、PHPやNode.jsの脆弱性、VPN機器のインシデントといった既知の攻撃経路を、自社のプログラムをサーバー上で直接動かさないAWS Serverlessの構造で避けられると説明する。VALANCE自体の基盤は脆弱性診断とISO認証で管理しており、利用企業側のVPN機器の更新などは、引き続き各社で行う必要がある。
製品契約を主軸に、パートナー経由で提供
要件定義やAIエージェントへの指示出しは、コンサルティング会社、OA商社、金融機関などのパートナーが担う。同社は初期の3ヵ月間、顧客の現場に入り、週次で要件確認と改善を回すFDE(Forward Deployed Engineer)の機能を自社で持つ。事業の拡大に合わせ、この役割をパートナーの人材が担えるよう、教育を進めている。
クラウドだけでなく、自社設置のサーバーで動かすオンプレミス環境にも対応する。Mac miniやNVIDIA製GPU端末での稼働を想定し、現在も対応を進めている。想定する需要は大きく3つある。1つ目は、大企業のBCP対策である。2つ目は、外部ネットワークを遮断した環境での利用である。3つ目は、利用量に応じて増えるLLMのトークンコストの高騰への備えである。こうした要望に応えるため、ローカルLLMやオンプレミスOCRを併用できる構成をとる。クラウド版とオンプレミス版で、3層の構成は変わらない。
パートナーには、CCIグループのCCイノベーションがある。2026年4月に共同でAI活用支援サービス「CCI-VALANCE」を始めた。地方のOA商社とも、広島の理研産業、京都の三井田商事、徳島の金剛と、2026年8〜9月に相次いで業務提携した。各社は地域の中堅・中小企業の顧客にAI導入を提案する。直販の中心は中堅・中小企業で、大企業からの引き合いも増えている。提携先には地方銀行や通信キャリア、大手SIer、OA商社といった大企業が多く、各社が抱える多数の中小企業の顧客に届けるのが狙いだと渡邉氏は語った。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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