20周年を迎えるガートナーの「先進テクノロジのハイプ・サイクル」は、2,000を超えるテクノロジを119の分野にグループ化し、その成熟度、ビジネスへの貢献度、今後の方向性に関する分析情報を図示して提供している。
2014年には、新たにデジタル・ワークプレース、コネクテッド・ホーム、エンタプライズ・モバイル・セキュリティ、3Dプリンティング、スマート・マシンなどのハイプ・サイクルを追加した。
ハイプ・サイクル(Hype Cycle)の中でも、「先進テクノロジのハイプ・サイクル」は最も歴史が古く、ビジネス戦略担当者、最高イノベーション責任者、研究開発(R&D)リーダー、起業家、グローバル・マーケット・デベロッパー、先進テクノロジ・チームが先進テクノロジのポートフォリオを策定する際に考慮すべきテクノロジとトレンドが、業種横断的な視点で示されている (図1)。
図1 先進テクノロジのハイプ・サイクル:2014年
ガートナーは、デジタル・ビジネスに向けたロードマップにおいて、次のように発展する6つのビジネス時代モデルを定義している。
・デジタル・ビジネスの発展過程における6つのビジネス時代モデル
ステージ1:アナログ
ステージ2:Web
ステージ3:E-Business
ステージ4:デジタル・マーケティング ステージ5:デジタル・ビジネス
ステージ6:オートノマス(自律型)
「先進テクノロジのハイプ・サイクル」は、より新しいテクノロジに焦点を当てているため、このハイプ・サイクルに含まれるテクノロジの多くは、後半の3つのステージに属するものになるという。すなわち、デジタル・マーケティング、デジタル・ビジネス、オートノマスのステージに3ステージになる。
■デジタル・マーケティング(ステージ4)
・「力の結節」(モバイル、ソーシャル、クラウド、インフォメーションの強固な結び付き)が重要になる。
・このステージでは、消費者がソーシャル・コネクションを広げたり、製品やサービスからより高い価値を獲得したりするために、マーケティング活動へ積極的に参加したいと考えており、企業はこれらの消費者とつながるための新しくより洗練された環境に焦点を当てることになる。
・製品やサービスの購入者は、従来よりもブランドを重視するとともに、窓口としてモバイル・デバイスおよびソーシャル・ネットワークを好んで利用する。
・ビジネスの成長を目指す企業は、購入者に対する影響力の強化に取り組むことになる。
・デジタル・マーケティングのステージを代表するテクノロジは次のとおり。
ソフトウェア定義、立体ホログラフィック・ディスプレイ、ニューロ・ビジネス、データ・サイエンス、
プリスクリプティブ分析、複合イベント処理、ゲーミフィケーション、拡張現実、
クラウド・コンピューティング、NFC、仮想世界、ジェスチャ・コントロール、インメモリ分析、
アクティビティ・ストリーム、音声認識
■デジタル・ビジネス(ステージ5)
・力の結節後に到来する最初のステージ。
・このステージでは人、企業、モノの統合に焦点が当てられる。
・このステージでは、モノのインターネットならびに、物理的世界と仮想世界の境界があいまいになるという考え方が強力なコンセプトとなる。
・物理的資産はデジタル化され、ビジネス・バリューチェーンにおいて、システムやアプリケーションなど既存のデジタル資産と同等の役割を果たすようになる。
・3Dプリンティングによって物理的なモノのデジタル化がさらに進められ、サプライチェーンと製造環境の変革を実現する大きな機会が創出される。
・また、例えばバイタル・サイン(血圧や体温、脈拍)のような人の属性情報をデジタル化することも可能になる。
・このステージでは、(既にデジタル化が進んでいるといえる)通貨さえも変革の対象となる(例えば暗号通貨)。
・力の結節にかかわるテクノロジの先へ進み、デジタル・ビジネスを実現したいと考えている企業が検討すべきテクノロジは次のとおり。
生体音センサ、デジタル・セキュリティ、スマート・ワークスペース、コネクテッド・ホーム、
3Dバイオプリンティング・システム、アフェクティブ・コンピューティング、音声翻訳、
モノのインターネット、暗号通貨、ウェアラブル・ユーザー・インタフェース、
コンシューマー3Dプリンティング、マシン対マシン・コミュニケーション・サービス、
モバイル・ヘルス・モニタリング、企業向け3Dプリンティング、3Dスキャナ、
コンシューマー・テレマティクス
■オートノマス(ステージ6)
・力の結節後の最後のステージ。
・オートノマス(自律型)のステージにおいて、企業は人間と同様(ヒューマンライク)な能力または完全に人間に代わる能力を提供するテクノロジを利用することが可能になる。
・自律走行車による人や製品の輸送、またコグニティブ・システムによるテキストの書き込みや顧客からの問い合わせへの回答などは、すべてこのステージを表すテクノロジの例。
・競争力を高めるためにこのステージへ到達することを目指している企業が検討すべきハイプ・サイクルのテクノロジは、次のとおり。
仮想パーソナル・アシスタント、ヒューマン・オーグメンテーション、
ブレイン・コンピュータ・インタフェース、量子コンピューティング、スマート・ロボット、
バイオチップ、スマート・アドバイザ、自律走行車、自然言語による質疑応答システム
なお、ガートナーでは10月28~30日に、東京・台場で開催する「Gartner Symposium/ITxpo 2014」において、デジタル・ビジネスに関連した提言を行うとしている。
【関連リンク】
ハイプ・サイクル・レポートのリンクサイト(英文)
「Gartner Symposium/ITxpo 2014」の詳細