この結果について、ガートナー ジャパンのバイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏は、「クラウド・コンピューティングの採用率は2012年には10.3%であったことから、この5年間で6ポイント近く上昇しました。平均すると1年間でおよそ1ポイントの上昇であり、すなわち、日本におけるクラウドの採用スピードは、相当緩やかなものであるといえます」と述べている(図1)。
また、2016年の採用率がそれほど伸びていないことについて、「日本では、どのクラウドを選んだらよいか、コストはどうなるか、どの業務システムをクラウドに移行できるか、セキュリティは大丈夫か、といった『基本の確認』フェーズが続いています。クラウド・コンピューティングというキーワードが世の中に登場したのは2006年ですが、多くの企業はこの10年間、同様の議論を続けています」と述べている。
一方、この状況が今後どうなるかについて亦賀氏は、「2015年頃から、クラウド上では、モバイル・アプリケーション開発、モノのインターネット(IoT)、機械学習、ブロックチェーン、クラウド・アクセス・セキュリティ・ブローカ(CASB)といった新しいサービスが急速に登場しつつあります。こうした新しいサービスは、デジタル・ビジネスやクラウド・ファーストの考え方を、ガートナーが提唱するバイモーダルITのモード2アプローチの中で加速させるきっかけをもたらしており、企業のクラウドに対する取り組み全般を次のステージに推し進める可能性があります。企業は、企業情報システムのクラウド化だけではなく、こうした新しいサービスの可能性とインパクトにも早期に注目すべきです」とコメントしている。
なお、ガートナーでは来る4月26~28日に、東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)において、「ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2016」を開催する。このサミットでは、前出の亦賀氏をはじめ、ガートナーの国内外のアナリストが、デジタル・ビジネスの時代に向けてITインフラストラクチャの企画、設計、構築、運用に携わるリーダーがなすべきことについて、さまざまな知見を提供するという。