Googleは12日、「Google Enterprise Day 2008 Tokyo」を開催した。このイベントは、同社が企業向けに提供する「Enterprise Search(企業向け検索)」「Google Apps(Gmail、Googleドキュメント、Googleカレンダーなどのコラボレーションツール)」「Geo(地図、航空写真)」といったソリューションサービスの紹介をおこなうもの。基調講演を始めとする9つのセッションと協賛各社よる関連製品のデモ展示が催された。
クラウドコンピューティングには信頼性と未来がある
Google Inc. エンタープライズ部門担当社長のDave Girouard氏による基調講演「Google エンタープライズ ―ビジネスのためのイノベーション」では、同社の企業向けソリューションの最新動向と、ビジネス領域におけるクラウドコンピューティング活用が生み出すアドバンテージについて解説した。
まず、同氏は企業へのサービスの浸透具合について「当初は中小企業による導入がメインだったが、最近では大企業による利用も増えてきている」とその感触を述べ、近頃米国で行った15,000人規模の企業におけるマイグレーション事例を紹介。その後は、新しい機能が次々とリリースされるスピード感や、スケールを活かしたコストパフォーマンスなど、企業がクラウドコンピューティングによって得られる多数のアドバンテージについて言及した。
特に、ビジネス利用においてもっとも重要な観点となるセキュリティや信頼性については、「クラウドコンピューティングこそプロプライエタリよりも信頼性に優れている」「確かにクラウドコンピューティングも100%の安全を保障することはできない。しかし、あなたの会社のメールサーバに情報を置いておくのと、強固なセキュリティで守られた我々のデータセンターに預けるのではどちらが安全だろうか」「毎日膨大な量のクレジットカード情報や個人情報を扱うGoogleにとって情報管理はもっとも重要な課題であり、世界一の技術をもっていると自負している」とアピールを行ったほか、第三者機関による調査結果や米国の監査基準であるSAS70の取得事実などを援用し、企業側が持つ新技術への不安感の払拭に努めた。
セッションの終盤では「全ての会社がデータセンターを捨てることは無いと思う。しかし、今後新しいことはクラウドコンピューティングで起きるはずだ」「若い世代ではクラウドコンピューティングへの期待値がより高まっている。今後、優秀な人材を採るための環境づくりが必要」と、クラウドコンピューティングの活用を促した。
「確かに、我々に情報を預けることが怖いことは十分理解している。Googleは信頼を築くためのステップを踏んでいくつもりだ。今後、皆さんと良い関係を築いていきたい」とエンタープライズ領域において長期的なスパンで注力する方針を述べ、約1時間の講演を締めくくった。
その他のセッション、ブースについて
午前中は基調講演のほか、ゲストスピーチが行われた。また、午後からは、「Google Search」「GoogleApps」「Geo」など、各テーマについて解説するブレイクアウトセッションと基調講演が催された。ブレイクアウトセッションでは、GmailやGoogle Docs(ブラウザベースの各種オフィスツール)などをまとめた「Google Apps」が特に多くの聴講者を集めており、同ソリューションへの関心の高さが伺えた。
一方、協賛企業によるブース展示では、Google Apps、Enterprise Searchと連携する各種製品や導入支援事例などの紹介が行われた。内部統制などによる情報管理コストの増大と、経済危機による収益の圧迫によって、企業のIT投資はますます苦しくなる。今後は、メールサーバ、ファイルサーバといったコアコンピタンス以外の単純コストの部分については、クラウドコンピューティングなどを活用してアウトソースを図っていかざるを得ないのではないか、と今後の見通しについて各社の関係者は語った。