2015年~2020年の年間平均成長率はマイナス2.8%に
2020年の国内エンタープライズITインフラストラクチャ市場は7,037億円になると予測している。2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)はマイナス2.8%になる。国内エンタープライズITインフラストラクチャ市場は、国内トラディショナルITインフラストラクチャ市場と国内クラウドITインフラストラクチャ市場に細分化される。
国内トラディショナルITインフラストラクチャ市場では「価格性能比向上と処理能力に対する需要の弱含み」および「トラディショナルITからクラウドITへの投資シフト」による負の影響が表れている。現時点では、同市場における構成比が6割を超えるサーバーにおいて、負の影響が顕著に現れている。
2020年に向けて、同様の影響がストレージやスイッチに対する支出額にも波及するとIDCではみている。なお、2016年の国内トラディショナルITインフラストラクチャ市場は、前年比12.4%減の5,973億円、2015年~2020年のCAGRはマイナス8.0%を見込んでいる。
クラウドITインフラは2015年~2020年のCAGRは14.7%を見込む
逆に、国内クラウドITインフラストラクチャ市場では「トラディショナルITからクラウドITへの投資シフト」によって、サーバー、ストレージ、およびスイッチといったすべてのコンポーネントにおいて高成長を維持するとみている。2016年の市場規模は前年比22.9%増の1,576億円、2015年~2020年のCAGRは14.7%を見込んでいる。
しかし、大手クラウドサービスプロバイダーがクラウドITインフラストラクチャとして採用するコンポーネントは、ODM(Original Design Manufacturer)から直接調達するケースが多く、価格要件が厳しい状況にある。さらに、自社運用、自前保守が主体であるため、ハードウェア販売に付随したインテグレーションサービスや保守サービスによる副次的収益を得る機会も限定的だ。
結果的に、従来からエンタープライズITインフラストラクチャ市場に参入していたサーバーベンダーなどにとって、クラウドITインフラストラクチャ市場の大半は有効市場となりにくいビジネス構造にある。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ グループマネージャーの福冨里志氏は、「2016年の国内エンタープライズITインフラストラクチャ市場における支出額の8割弱は、トラディショナルITインフラストラクチャになる見込みである。国内トラディショナルITインフラストラクチャ市場における優良顧客とは、主に次の2つの条件を満たす顧客である。顧客が事業ドメインで過度の国際競争にさらされていないこと、ITシステムに対する信頼性/高可用性/安全性に対するコスト負担を許容していること、といった条件である。ベンダーは自社の顧客ベースにおいて、これらの条件に合致する顧客と長期的かつ戦略的なエンゲージメント関係を構築し、維持する必要がある」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内エンタープライズITインフラストラクチャ市場予測 アップデート、2016年~2020年」にその詳細が報告されている。このレポートでは、2016年~2020年の5年間における国内エンタープライズITインフラストラクチャ市場全体、およびサブマーケット(クラウドITインフラストラクチャ/トラディショナルITインフラストラクチャ)別に予測を提供している。