
今回の週報も、この秋の海外イベント取材時にタイムリーにレポートしきれなかったネタを取り上げる。Salesforce.comの年次カンファレンス「Dreamforce 2017」では、同社の各種サービスなどのパーソナライズ化やセルフサービスで活用できるようにする新たな「myシリーズ」の提供開始が発表された。 このmyシリーズには、自社ブランドのためのモバイルアプリケーション開発と公開が容易となる「mySalesforce」、学習コンテンツをカスタマイズして企業の人財育成を支援する「myTrailhead」、顧客データと組み合わせたIoTの構築が容易になる「myIoT」、そしてLightningによるカスタマイズの自由度を大きく高める「myLightning」がある。
myEinstein登場、Salesforceの中で簡単にAI機能を含んだアプリケーションを作る!
さらにもう1つ発表されたのが、「myEinstein」だ。従来のEinsteinは、Salesforceの各種サービスの裏側で機械学習技術を活用するするためのものだ。そのため、Einsteinで実現されている機能は、Salesforceによって予め用意されたものを活用する形だった。今回新たに提供を開始したmyEinsteinは、「機械学習の機能をクラウドのさまざまなところで利用できるようにする、プラットフォームのアプローチです」と語るのは、Salesforceの製品マーケティング ディレクターで、Einsteinの担当をしているアリー・ウィザースプーン氏だ。

製品マーケティング ディレクター
アリー・ウィザースプーン氏
つまりこれは、AI対応のアプリケーションをSalesforceのプラットフォーム上で構築できるようにするもの。「myEinsteinを使えば、機械学習の機能の構築を自動化できます」とウィザースプーン氏。機械学習機能の実装が自動化され便利に使える一方で、現時点ではユーザーが機械学習モデルを自由に選ぶ機能などは提供されていない。最適化された1つのモデルを利用することで、データサイエンティストがいなくても機械学習の機能を容易に実現できるようになっている。
まずはmyEinsteinとして、Einstein Prediction BuilderとEinstein Botsの2つのサービスが提供される。前者はAI対応のカスタムアプリケーションを構築するためのツールだ。Salesforceの標準オブジェクトのデータでもカスタムオブジェクトのデータでも機械学習の対象にできる。24時間以内に独自の予測モデルが構築でき、それをワークフローの中に組み込むことが可能だ。
もう1つのEinstein Botsは、Chat Botを作るためのツールとなっている。機械学習を活用して自動で応答するChat Botを構築し、これもまたSalesforceのワークフローの中に組み込むことができる。
Einstein Prediction Builderでは深層学習技術を利用しており、映像の認識や自然言語処理なども行える。2つのAPIを用意していて、それをカスタマイズ化して使える。映像解析では、自分たちの構築したモデルも使える。特定の映像データを訓練することができ、そのためのAPIも用意されている。これにより、さまざまなものを分類可能となる。その結果を見て、さまざまな課題を識別できるようになる。当初の対応は英語だけだが、他の言語への対応も予定されている。
適用する領域としては、顧客のリードスコアリングなどがある。あるいは、営業成績を達成するための予測を行い、その結果を営業のコーチングに活かすといった利用も考えられる。Service Cloudの中などでは、エージェントなどが入力しなくても、時間がかかっていた対応などを自動で識別することなどができるようになる。
「Einstein Prediction Builderの予測機能は、さまざまなものに適用できます。営業、マーケティング以外にも人事、さらには金融業界などでも使えるものになっています。これを活用することで、サービスの解約率を減らす予測なども可能です」(ウィザースプーン氏)
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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