エンク氏はI&Oリーダー、CIO、CTOは、既存のIT運用の維持に苦心していると同時に、ビジネス・リーダーが絶えず導入し続けている新しいテクノロジーにも対応しなければならず、短期的なプランニングの先を考察する時間がほとんどなくなっている現状を指摘。同氏は、「今後、さらに企業がデジタルビジネスに踏み出すこととなり、サービス・製品すべてにデジタルが活用される時代となる」と強調。「IT部門がデジタル時代を生き抜くための準備として投資、技術、人、すべてが変わる必要がある」と続け、2018年のテクノロジートレンドトップ10を紹介した。
2018年のテクノロジートレンドの特徴は、いずれもデジタルプラットフォームの変化に関わるものという。同氏は「未来のデジタルプラットフォームには、インテリジェンスをはじめ、エコシステム、顧客、モノ、ITシステムといった5つの要素を変化させ、取り込む必要がある」と話す。
デジタルプラットフォームにおける変化のトレンドトップ10は大きく3つに分類され、「地理的な計画策定」「インテリジェント・エッジ」「インテント・ベース・ネットワーキング」による「戦略的トレンド」、「API―統合の経済性」「評判とデジタル・エクスペリエンス」「従来のITの枠を越える—新たな現実」によって構成される「戦術的トレンド」、そして「戦略としてのDCaaS」「慎重なクラウド導入」「キャパシティの最適化—あらゆる場所で実施」「拡張型インフラストラクチャ管理」という「運用的トレンド」に分けられる。
中でも、エンク氏は戦略的トレンドである「インテント・ベース・ネットワーキング」に着目。現在、インテント・ベース・ネットワーキングを本番環境で使っている企業は50社にも満たないが、2020年には1000社を超える大企業が使用すると大幅な増加を予測している。
インテント・ベース・ネットワーキングとは、SDNにおける新しいソリューションで、ネットワークが自身で問題を検出し、自らAIのアルゴリズムでリコンフィグレーションすることなどを可能とする。ネットワーク自体が従来より柔軟になるだけでなく、予測分析に加え、分析に基づきビジネスにおいてプライオリティの高いものは何かの判断も行ってくれるという。エンク氏はインテント・ベース・ネットワーキングについて「最も先を行っている話題だが、今の時点から認識して注目をしてほしい。これから多くのベンダーがこの技術を使うこととなるだろう」と予見した。
そのほか、講演では、パートナーを活用しコロケーションなプロバイダーとの相互接続を構築した上で、各々のワークロードやアプリケーションがクラウドやデータセンターなど、どこに置くべきか顧客目線での判断が重要となることや、ネットワークの遅延が顧客エクスペリエンスに直結し、企業の評判にも関わってくることなどにも触れた。
さらに同氏は、「2020年末までに、あらゆる箇所においてキャパシティの最適化をせずクラウドIaaSにリフト・アンド・シフトし続ける組織の45%は、55%過剰にプロビジョニングされ、最初の18カ月で70%過剰な支出が生じる」などとも話した。
最後にエンク氏は「ITを道具ではなくサービスの提供者へと変革する」こと、「ビジネス要件に焦点を当てたインフラストラクチャ・デリバリ戦略を策定する」こと、「拡張型ITが新しい標準になる」こと、「ITはコスト・センターではなく、売り上げを実現する存在となる」ことなどを提言。デジタル時代の変化への対応を呼びかけた。