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SAP HANAをカジュアルに使ってみよう – SAP HANA, express edition –

 昨今、インメモリープラットフォームとしてSAP HANAを中心にデータ管理基盤を進化させているSAPですが、エンジニアの方を中心に「でも、触ったことないし〜」「あれってアプライアンスなんでしょ〜」といった簡単に環境にアクセスできないことへのフラストレーションをお聞きするのも事実です。そこで今回、そのような皆さんに「無料」「簡単」「柔軟」にSAP HANAを利用できるSAP HANA, express editionを紹介します。

SAP HANA, express editionってなに?

 SAP HANA, express editionは、32GBのメモリーサイズまで商用、非商用を問わず無料で利用することができます。また、通常のSAP HANAでは、使用するハードウェアに関してSAPによる認定が必要となっており、パフォーマンスや可用性などを厳しくチェックされています。しかし、SAP HANA, express editionの場合は一般的なデスクトップ、ラップトップなどで8GB以上の物理メモリーが搭載されていれば、特別な認定は必要ありません。

 さらに、32GBを超えるサイズのデータをSAP HANA, express edition上で処理したい場合は、SAP storeで月額のサブスクリプションとして32GB単位で最大128GBまでライセンスを購入し、SAP HANA, express editionを柔軟に拡張することも可能です。(ただし、上記無料版と同様にサポートはコミュニティサポートとなります)

 エンジニアの皆さんは、これらのSAP HANA, express editionを利用してSAP HANAの機能検証や、アプリケーション開発などを簡単に行うことが可能です。通常の製品としてリリースされるSAP HANAとSAP HANA, express editionに機能的な差異は、ほぼありません。(一部、データ階層化やスケールアウト構成などSAP HANA, express editionではサポートされていないものもあります。詳細はマニュアルの”Feature Scope Description for SAP HANA, express edition”を確認してください)

2つのインストールモジュールと様々なデプロイオプション

 それでは、早速SAP HANA, express editionの利用方法の説明に入りたいところですが、まず、SAP HANA, express editionのインストールモジュールの種類やデプロイオプションなどを簡単に説明し、SAP HANA, express editionの利用方法の概要を説明した後、具体的なデプロイ方法を説明します。

 SAP HANA, express editionの説明ページに2つのインストールモジュールやデプロイオプションのフローチャートがありますので、詳細はそちらを確認してもらいたいのですが、ここでは、簡単に概要をまとめておきます。

 インストールモジュールとしては大きく2種類あり、物理メモリーが8GB以上必要で、基本的にはSAP HANAのデータベース部分のみの機能にフォーカスした「データベースサーバーのみ」、もう一方は物理メモリーが16GB以上必要で、「データベースサーバーのみ」に加えて、アプリケーションサーバーも同梱し、Webベースの開発環境(Web IDE)や運用管理ツール(SAP HANA, cockpit)などが利用可能な「データベースサーバー + アプリケーション」です。     

表 1 インストールモジュールと機能比較
データベースサーバーのみ    データベースサーバー + アプリケーション
✔️ 既存のアプリケーション(Python, Java, .NET, Node.js)向けSAP HANAデータベース ✔️
✔️ レポーティング、予測分析、機械学習、ストリーミング分析 ✔️
✔️ ドキュメントストア、空間、テキストおよびグラフ処理 ✔️
✔️ データ統合とデータフェデレーション ✔️
  ネイティブSAP HANA開発(XSA, マイクロサービス) ✔️
  SAPツール(Web IDE, SAP HANA, cockpit, Enterprise Architecture Designer) ✔️

 上記の2つのインストールモジュールは、オンプレミスおよび各種クラウドプロバイダー上でデプロイすることが可能です。オンプレミスの場合は、Dockerイメージ、仮想マシンイメージのようにOSからSAP HANA, express editionまである程度事前に準備済みのタイプが利用可能です。また、オンプレミス、クラウドでは、バイナリーパッケージと呼ばれるユーザー自身が用意するOS上にSAP HANA, express editionをソフトウェアとしてインストールを行うことも可能です。さらに、各クラウドプロバイダーでは、それぞれのマーケットプレイスでSAP HANA, express editionのイメージを利用可能にしていますので、どのパッケージを利用していても、簡単にSAP HANA, express editionの利用を開始できます。

 以下に、インストールモジュール、インストールパッケージ、およびデプロイオプションの組み合わせの概略を記載しておきます。

図 1 インストールモジュール、パッケージ、デプロイオプションの関係
図 1 インストールモジュール、パッケージ、デプロイオプションの関係

 クラウドプロバイダーによるマーケットプレイス以外でSAP HANA, express editionを利用する場合の大きな流れは以下になります。(クラウドプロバイダーによるマーケットプレイスでSAP HANA, express editionを利用する場合は、各クラウドプロバイダーから提供される手順を確認してください)

  1. SAP HANA, express editionのユーザー登録し、ダウンロードマネージャーの取得
  2. 必要なインストールモジュール、パッケージをダウンロード
  3. インストールパッケージをデプロイ

 これから具体的に、インストールモジュールとして「データベースサーバーのみ」、インストールパッケージとして仮想マシンイメージを使って、ローカルのPCにデプロイする手順を見ていきます。

次のページ
データベースサーバーのみをオンプレミス(仮想マシンパッケージ)にデプロイする

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新久保浩二(シンクボコウジ)

 SAPジャパン株式会社 - プラットフォーム事業本部 ビジネス開発部 SAP HANAややこしいところ担当 前職からのデータベース マニアック担当を卒業し、2015年からSAPジャパンでSAP HANA Platform、ビッグデータ関連ソリューションのプリセールス、ビジネス開発を担当。SAPジャ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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