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本当のところ情シス部門はデジタル時代に何をすべきか――ユーザー情シス部長兼経営企画と考える≪前編≫


 グループ会社の情報システム部門の責任者であり、さらにはユーザー企業のシステム戦略領域から経営企画にも携わる、株式会社アニメイトホールディングス 情報システム部門 部長の右田拓也氏を迎え、「DX時代におけるIT組織のあり方」について訊いた。デジタルトランスフォーメーションの時代を迎え、ビジネスにおけるIT技術活用は不可欠だ。IT組織においても進化が求められている。ITの組織、ITインフラ構築と運用のこれからについて、IT組織変革支援や複数ベンダーの管理手法に詳しいアクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントクラウド&インフラストラクチャグループ シニア・マネジャーの加藤明氏と探る。

情シス部門を取り巻く「デジタル」と「グローバル」

右田 拓也(みぎた・たくや)氏
株式会社アニメイトホールディングス システム部 部長
1998年、情報セキュリティ関連会社にSEとして入社。2000年、インターネット関連企業に転職。ITサービスを提供する子会社で、業務担当者としてITベースのサービスオペレーション業務などに従事。2010年に人材派遣の企業に転職。システム部長として事業変革に力を入れる。その後、企画担当として百貨店の情報システム会社に移籍。部長経験を見込まれ、担当としてシステム運用、ヘルプデスクなどを担当するサービスデリバリ部署の部門長に。その後、現職に至る。

 加藤氏:まず、現在の右田さんのお立場についてお聞かせください。

 右田氏:アニメイトホールディングスには、経営企画というポジションで入社し、その後、システム部門長として働いています。入社当時、アニメイトが30周年を迎えるタイミングで、事業変革が求められた時期でもあり、エンジニアから企画やシステム部門長を経験した私もITベースの経営にチャレンジしたいという思いで入社しました。これまでと同様社内の困りごとをチームで解決するプロジェクトに携わることが多いです。業務オペレーションの変革であったり、システムの刷新であったり、トラブルシューティングだったり。常にITを道具として仕事を進めています。

 加藤氏: 今回はそういった「ITだけでなくビジネス側の経験の中でITをいかにうまく使っていくか」を実践されてきた経験からお話を聞かせてください。情シス部門は今、さまざまな課題を抱えています。個人的に、ビジネスとITという枠組みに分けていること自体が課題だと考えていて、右田さんはこれを分けずに語れる方だと思いお声掛けしました。

 まずは、情報シス部門の視点からお話を聞かせていただきたいですが、現在どのような変化が情報システム部門で起きていますか?

 右田氏: 現在、情シス部門の業務はPCサポートやシステムの保守運用、社内のヘルプデスクが中心ですが、少しずつ期待値が上がっていると思います。社員やお客様は常に新しいITに触れており、経営からも新しいITへの対応が求められており、その期待に応えなければなりません。アニメイトグループは、お客様に喜んでもらうことがゴールであり、その期待値はかなり高い。今だけでなく、将来のITのあり方を考えることも、経営者から求められています。

限られたコストの中で新たなシステム投資を模索

 右田氏: その中で、アニメイトの置かれている状況をお話しすると、小売業として世間からは華やかに見えるところもありますが、シビアなコストの中で事業運営しなければならない現実もあります。これは弊社だけでなく、業界としての特性だと思います。ギリギリで得られた利益の中から、まずは現状のビジネスを支えるシステムの運用や保守に予算を回す。その上で新たな投資をするにしても必要最低限のものを対象にしなければなりません。

 加藤氏: アニメやマンガの世界は、日本だけでなく海外へのビジネス拡大も顕著ですよね。そういった対応も、新たに情シス部門には求められる部分でしょうか。

 右田氏: 日本のアニメ市場規模は2兆円を超え右肩上がりに成長していると言われています。内需だけでなく、海外のお客様も無視できない。海外を意識したビジネス、インバウンド顧客への対応も求められています。アジアを中心に市場が盛り上がっており、日本市場はどうするのか、アニメイトとしてはどうあるべきか。ここは、まさに試行錯誤の段階です。こういった経営判断のためにも、システムは今後どうあるべきかを見出すことが期待されています。

 加藤氏: 「グローバル」と「デジタル」は最近のキーワードですよね。デジタルトランスフォーメーション、新しいITテクノロジー使って業務を改革することが求められています。デジタル化で業務が変わり、スピードが圧倒的に速くなる。しかしそういった変化への対応が追いつかなくなる。顧客からも相談を受けることが多々あります。

情シス部門がデジタル時代に挑戦すべき2つの柱

アクセンチュア 加藤氏

 加藤氏:日本企業に関して言えば、現状の情シス部門のメンバーは、今必要なスキルは持ち合わせている一方で、デジタル化による要求や変化に対応するための必要なスキルを高める、あるいはシフトしていくところはまだまだという印象があります。多くの企業も悩むこの課題に情シス部門自身が取り組むべきこと、また課題解決のために外部サービスを活用するについてどのような見解をお持ちですか。

 右田氏: アニメイトの情シス部門でもそのような課題を感じており、新たなスキルの取得やシフトを進めようとしています。まだ十分ではありませんが、2つのことをチャレンジしようとしています。

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外部サービス活用のための「翻訳」と自社社員にしかできない「データ管理」

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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