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IT人材枯渇に備える

これから5年が勝負、エンジニアの「大波の乗りかた」を考える

第5回

 連載5回目の今回は、皆さんの今後のキャリアについて考えてみたいと思います。今の仕事に満足されている方、不満を持たたれている方、色々な状況が考えられますが、恐らく多くの方は将来について少なからず不安と期待があるのではないかと思います。エンジニアの行く末というと大袈裟ですが、エンジニアの将来について考えてみたいと思います。

ここから5年は勝負の時

 ここから5年と書くと、今までは変革が起きていないように感じますが、もちろんITによる変革はこれまでも速い流れで進んできているのは間違いありません。さらにこの先5年で、SAPのEOSL、2025年問題を代表するようにこの先5年は企業にとっても今までにない大規模なIT投資の機会が間違いなく訪れるでしょう。また通信環境の変革やテクノロジーの進化がさらに加速することも重なって、大規模かつ難易度の高いプロジェクトが全世界的に立ち上がるでしょう。IT関連企業は、この波をどのように乗り切るのか考えていることと思います。

 そんな環境下、皆さんはどのようなキャリアを描いて勝負しますか?

キャリア計画は戦略立案プロセスと同じ

 私のキャリアは少し変わっていて、ITエンジニアからCTOになり、ITと経営の融合を目指し経営戦略部門を立ち上げ、中期計画の立案や実行を担い、その計画の中で重要な海外戦略を推進すべく自ら事業責任者となり新規事業を担当しています。なぜそんな遍歴を辿ってきたのかを少しお話ししたいと思います。

 もちろん、会社の理解が大きかったと思います。ITしか知らない人間を経営戦略担当に任命するわけですから普通の会社ならNGでしょう。やる人もいなかったですし変化の為のチャレンジだったと理解していますが、私なりに考えたうえでのキャリアチェンジでした。

 少し話が脱線しますが後から関連することなので先にお話しすると、経営戦略を立案したり、新規事業や新規サービスを立案する際には色々な分析や可視化を行います。

 世の中には色々な分析、可視化ツール、手法、プロセスがあります(例えばSWOT分析とか3Cとか聞いたことがあると思います)が、私なりに色々な勉強を重ねて導き出した結論として、成功させるために満たさなければいけない要素を要約すると、

 1. 提供価値が大きい
 2. 市場に増幅力がある
 3. 自社の強みを生かし参入障壁が高い
 4. 収益性と継続性が高い事

さらに、

 5. IT化できる(人に依存しない)
 6. 良いパートナーと良い契約を締結する

が必要です。

 当たり前のことを書いているわけですが、以外と整理された物がなく、自分の考えていることをチェックするツールやプロセスが書式化されていないことに気付きました。恐らくその筋のプロは経験から当たり前のように考えているのかもしれませんが、なにせ素人でしたから自分で解釈し整理するしかありませんでした。

 1と2は必須です。3と4は欠ける場合はリスクになりますのでリスクマネジメントをしっかり行い、補完する必要があります。5と6は必須ではありませんが事業形態によっては必須になる場合もあります。

 なぜこの話をしたかと言うと、経営戦略や新規事業を導き出すために必要な要素は、キャリア形成においても分析や自身の行動計画に役に立つと考えていて、プロセス自体も非常に似たものがあると思っています。

 まず1つ目の提供価値についてですが、多くの方は会社に所属していて給料をもらうサラリーマンだと思います。サラリーマンは会社に役務を提供することで対価をもらう形態ですが、その役務が会社にとっても価値であり、皆さんから見たら提供価値です。提供価値が大きければ当然、ポストも給与も上がる事でしょう。

 次に2つ目の市場の増幅力についてです。1つ目の提供価値が他でも使い物になるかどうかが市場性で、その市場が大きければ大きいほど(もしくはこれから拡大していく)職を失うリスクを下げることができるでしょう。

 さらに3つ目の自社(自身)の強みを生かし参入障壁が高い。についてですが、1つ目と2つ目にさらに3つ目の要素を加えることで、提供価値が高く、市場性もあるにも関わらず、人にはまねできない特別なスキルを持ち合わせている人になるのです。誰でもできることはいくら価値提供が大きくても時が経つと陳腐化するものです。

 最後に4つ目の収益性や継続性についてですが、前述3つの要素に加え、今だけ限定のスキル、市場ではなくて、できることなら長期でキャリアを描きたいものです。私の場合、IT責任者時代にこんな分析や将来のキャリアを入念に描いていたわけでもなく、偶然というか、昔から人と違ったことや誰もできないこと、ぽっかり穴が開いているポジションに魅力を感じてしまう性格で、もちろん、経験がない仕事ですから猛勉強するわけで、それをあたかも経験があるかのように振る舞い、行動力と見せかけの自信でカバーしてきました。今思えばそういった行動は、会社にとっても便利でもあり提供価値が高かったと思いますし、他人にはマネできない、大きなチャレンジ(市場への)だったのではないかと考えています。

 さて話を戻し、皆さんの周りではどのような環境変化がこの先ありそうですか?

次のページ
大きな波の乗りかたが重要だ

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この記事の著者

渡邉 信之(ワタナベ ノブユキ)

ITベンダにて主に金融系システムの開発に従事、その後プロジェクトマネージャーとして大規模開発プロジェクトに参画。2006年ゴルフダイジェスト・オンライン入社、現在はタイ事業推進室室長として活動中

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/12232 2019/07/08 06:00

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