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本当の「価値」あるサービスとは何か―IT担当者もストーリーから価値を創出


 今回は「サービス管理の価値定義および関係者間合意」をテーマに、ビズモデルデザインの園田雄史氏と対談し、IT運用組織の果たすべき役割を明らかにする。園田氏が取り組んでいるフレームワーク、バリュー・プロポジション・キャンバスや、LEGO(R) SERIOUS PLAY(R)メソッドといったものをどのようにサービス管理に活用できるかを伺った。(前編)  デジタルトランスフォーメーションの時代を迎え、ビジネスにおけるIT技術活用は不可欠だ。IT組織においても進化が求められている。ITの組織、ITインフラ構築と運用のこれからについて、IT組織変革支援や複数ベンダーの管理手法に詳しいアクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントクラウド&インフラストラクチャグループ シニア・マネジャーの加藤明氏と探る。

顧客にとっての価値とは何か、ストーリーから創出する

園田 雄史 氏 ビジネスモデルイノベーション協会の中で数名のファシリテータと共にレゴ部を作り活用法を探求するほか、大手ポータルサイトのIT運用に関わる業務の中で実践を行っている。

加藤氏:園田さんの取り組む「ビジネスモデル・キャンバス」や「LEGO(R) SERIOUS PLAY(R)」などのフレームワークは、サービス管理に携わる人たちが活用できる可能性を持っていると私は思っています。今回はどうすればサービス管理で活かせるかをぜひお聞きしたいです。

 サービス管理のベストプラクティスであるITILにおいても、価値にフォーカスされており、ITIL v3では「バリュークリエーション(価値創造)」という考え方も定義されています。

 この辺りの話はすごく重要なのですが、理解はしていても現実的に価値を正確に定義できているかというと、標準的な目標値に留まってしまうケースが多く見受けられます。また、残念ながらITILにも価値を定義するための具体的な「HOW(どのように実施するか)」は書かれていません。結果、実践する際にはプロセス設計やツール導入が中心となり、「何が価値か」を顧客側と議論して定義することはなかなか難しいのではないでしょうか。今日は是非、どうやって顧客側と一緒に価値を議論し、合意形成を行っていくのかを考えたいと思います。

園田氏:よろしくお願いします。そもそも価値とは、というところからお話します。価値は「誰にとって」の価値かが最も重要です。ビジネスモデル・キャンバスを実践していても、価値提案をなかなか書けないことがあります。普段の仕事から価値を意識せず、時間的な工数評価で図ることに慣れていると、何をどれだけやったかの活動結果(=数)が主となってしまいます。顧客と自分たちのビジネスモデルを考え、それを踏まえて取り組んでいないと価値について突然考えることは難しいですね。

加藤氏:サービス管理には、価値を計る尺度としてSLA(Service Level Agreement)があります。これは本来、達成したい目標に対し価値を定め、それを図るためのKPIになっていると思うのですが。

園田氏:いえ、SLAはそれほど現状の価値と結びついていません。サーバーのコストが大きかった時代は、サービス維持コストも大きいのでSLAが重要な価値を決めていました。今はコストが下がって冗長構成も当たり前です。そうなると価値の概念も変化しますよね。SLAで数値化できるもので計れる価値は既に満たされていて、それでは満たされない部分の話が重要になっています。

加藤 明 氏

加藤氏:現状、多くの企業では従来のそういった価値の変化に対して、標準的なサービス管理の仕組みをそのまま当てはめようとして苦労されているケースもありますね。実は最近のサービス管理のアプローチ(VeriSM)では、テイラードアプローチと言われる、それぞれに最適化されたものをきちんと提供しようという発想が中心になってきています。KPIもSLAも、「誰にとって何をどう達成したいか」が大事であり、そのためターゲットを明確に設定し、サービス提供や管理のあり方を考える必要があるということですよね?

園田氏: はい。標準化で満たされることは既に達成されていて、次はそれで満たされないものにどう取り組むのか、というフェーズです。なければカスタムで作ることにもなります。これまで一斉に標準化をしてきましたが、標準化にコストがかかりすぎてできないという話もあり、標準化には価値がなくなってきています。個人的には、今までの積み重ねの上に次の価値の話があるとは思っていますが……。

加藤氏:積み重ねが大事だという考えには私も同意です。ITILもV2、V3があり、最近ではITIL 4がリリースされましたが、今から始める人はITIL 4から適用すれば良いかと言うとそうではないと私は考えています。これまでの積み上げでV2レベルのプロセスができている組織には、V3やITIL 4を適用しやすい状態にあると。単純にソフトウェアのバージョンアップの発想で、新しいバージョンを適用すれば良いという話ではないですね。ベースをきちんと実施した上でカスタマイズすることが重要ですよね。

園田氏: ただし、ビジネスモデル視点では価値があるものであれば何を使っても良いという考えもあります。価値を提供するために、最適なものは何かを考える。新しいバージョンがそれにあたるなら、それだけを使う考え方もあります。ITに携わっているとフレームワーク寄りに発想してしまい、そこを作ろうとしてしまいがちですが、それよりも「ビジネス価値を生み出すものは何か」から考えた方が良いです。

次のページ
フレームワーク寄りを脱する思考法『ビジネスモデル・キャンバス』

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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