
これまでオープンハウスが進めてきたDXについて、我々が目指したこと、実施してきたことについて紹介してきました。本連載を通して事業会社のCIOの皆さんに改めて伝えたいことは、勇気をもって自分が正しいと思うことをやり遂げようということです。
組織を動かす2つのメッセージ

4回の連載を通して私が皆さんに最も伝えたかったこと、それは結局、「正しい拠り所は自分が考えたIT戦略」ということです。
IT戦略をまずは具体的に実行計画まで落とし込み、経営者を始めとしたステークホルダーの合意を得ます。合意が得られないならば、それはIT戦略の内容に足りない何かがあるのでしょう。
CIOとしては、ステークホルダーから合意を得られるIT戦略を描くことは最大のミッションであると思います。IT戦略は、外部のコンサルタントに依頼するのではなく、必ず自らで描いて頂きたいと思います。合意が得られれば、あとは実行計画に沿ってスピード感をもって推進するのみです。
IT戦略の推進する話になると「当社の場合は事業部門間の壁があってなかなか動かない。どうすれば良いでしょうか」という悩みを相談されることが良くあります。そんな時にIT部門が組織を動かすための武器となるメッセージは、「コスト削減できる」と「ITで便利になる」です。
裏方のIT部門がビジネスの最前線にいる事業部門とコミュニケーションをするには、事業部門に享受できる確実なメリットを伝えて期待と信頼を得る必要があります。残念ながら飛躍できる得策はなく、時間をかけてでも愚直に信頼を獲得することが必要だと思います。
まずはわかりやすい形でIT活用による事業部門のコスト削減を実現し、そこで信頼を得てから本格的なIT戦略を推進して行くと良いと思います。コスト削減を嫌がる事業部門の責任者は、特別な理由でもなければ、まず拒む方はいません。
コツは、大まかに見積もった削減効果を事前に伝え、数ヶ月~半年後くらいの短期間で走りながら想定よりも多くのコスト削減効果を結果(財務諸表における具体的効果の提示)で示すことです。最近では、業務自動化を実現するRPAツールなども揃ってきていますので、合わせ技で取り組んで行くのも良いかもしれません。
単に安価なシステムへ切り替えてコスト削減効果を出すのではなく、業務の無駄を省き、真に便利にすることでコスト削減を実現してください。そのためには、CIOは必ず全事業部門の業務を観察し、業務内容と目的を現場の目線で正しく理解することです。
業務の観察を通して、どこに無駄があるのか、ITを導入することでどれだけ効率化できるかを時間が許す限り考えます。まずはIT部門が主体的に動き、事業部門に感謝されることを実現し、結果を残し続けることで事業部門とIT部門の距離を縮めていくしかありません。
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田口 慶二(タグチ ケイジ)
株式会社オープンハウス 執行役員 最高情報責任者(CIO)大手通信会社や外資系情報セキュリティ会社にて、インターネット黎明期より国際標準化仕様策定、EC基盤開発、多業種IT戦略コンサルティングに従事。インターネット技術を活用した戦略マーケティング、新規事業開発を加速。2014年 株式会社オープンハウ...
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