コロナ禍でDXの論調が変わった
DXとは、ビジネスを変革し、新しい価値やビジネスモデルを生み出すことであり、既存の業務のデジタル化(デジタライゼーション)とは一線を画するものだと言われていた。
しかし、最近では、テレワークの導入や電子帳票、ワークフローの電子化によるペーパーレス化などの「業務効率化」の文脈でデジタル変革やDXという言葉が使われるようになった。IT業界のバズワードは初期には定義にこだわる論者がいるが、新聞などでその言葉が流通すると、その定義自体はとやかくいわれなくなる。そして、そうした用語の定義が拡散し、一般に流通し始めた頃からジワジワと普及していく。かつての「AI」や「ビッグデータ」がそうだったように。
コロナ禍を機に、企業のデジタル化の遅れの問題が浮上した。企業だけでなく、政府や公共機関がおこなう助成や補助金の申請業務など、非デジタルな部分が足かせとなり、施策の遅れや停滞が指摘された。
つまり、「未来志向の変革」の前に、「現状のビジネスのデジタル化」が出来ていないということが明らかになり、その状況を改善するという文脈で、リモートワークやオンライン会議などにもDXという言葉が用いられるようになったといえる。経営者にとって、テレワークの推進は喫緊の課題となり、Zoomのようなオンライン会議を導入する企業も増えた。そして、ここから「その先のDX」にどうつなげられるかが、今後の企業の生き残りの鍵といえるだろう。
デジタル化でバックオフィス部門のテレワークを進める
こうした中で、非常に重要になっているのが、企業の「バックオフィスのデジタル化」だ。緊急事態宣言下でも、経理・会計、法務など紙を扱うバックオフィス部門の従業員だけは出社するという企業も多く、「紙やハンコのための出社」は社会問題になった。
「経理担当者には緊急事態宣言下でも輪番で出社したり、ホテルから通勤する人までいました。経理・会計担当者の83%はテレワークを実施できていません」と語るのはマネーフォワードが提供するで経費精算システム「マネーフォワード クラウド経費」のマーケティングを担当する成末庸平さん。