5人で1,100人の営業の案件管理をサポート
――NECネッツエスアイの事業内容と担当者様のプロフィールや現在の業務内容、取り組まれていることをご紹介ください。
齊藤:NECネッツエスアイは、NECの通信インフラ工事の部門が分離して1953年にできた会社です。国内だけでなく海外も含めた通信インフラ構築の他、企業向けのシステムインテグレーションから運用までを一貫して手掛けてきました。最近ではMVNOのような通信サービスの提供、クラウドサービス、さらにはオンプレミスのSIとクラウドを組み合わせたハイブリッドな提案でお客様を支援しています。
――Salesforceで構築した営業支援の仕組み定着化のためにWalkMeを導入したと伺いました。その背景について聞かせてください。
齊藤:2019年12月にSalesforce Sales Cloudを導入し、約1,100名が所属する営業組織で使っています。WalkMeの導入を決めたのは2020年3月のことでした。Salesforceの運用に入った後、使いこなしているユーザーとそうではないユーザーとの温度差が目立ってきました。加えてユーザーからの改善要求も増え始め、それに追いつかなければなくなったのです。ところが我々のチームには5人しかいません。1,100人をサポートするには、リソースの点でままならないのが悩みでした。
――ユーザーからの改善要求はどのような内容のものが多いですか。
齊藤:利用頻度の高いユーザーで顕著なのですが、事業環境の変化が早い分、商談履歴管理に必要な入力項目を変えたい。あるいは追加したいという声が多いですね。弊社が扱う商材は幅広く、物販から工事まで幅広い商談をすべて管理しなくてはなりません。Salesforceを導入したときは、営業現場からの合意を得て進めました。しかし、弊社のビジネスでは測定したい項目が多岐にわたるため、いざ運用に移ると、数々のチューニングが必要になったのです。また、入力項目を1つ追加すると、営業は全員で1,100人ですから、その告知と徹底にも時間がかかります。いかに対応を早く、かつ全ユーザーについてきてもらうかに腐心していました。
――Salesforceの導入前から定着化を視野に入れていましたか。
齊藤:もちろんユーザーへの説明会は実施しています。ですが、実際に運用に入ると、部門毎にSFAの理解度・活用度に温度差がある状態でした。営業全員ですべての案件に関するあらゆる行動を登録してほしい。平準化を導く仕掛けとしてWalkMeを導入しました。もう1つ、新入社員や中途採用した人たちにすぐに立ち上がってほしい。そのような背景もあり、5人では難しい営業の独り立ちを促すことへの期待もありました。
現場の利用定着を進めた2つのガイダンス例
――実際にどんなガイダンスを実装しましたか。
加藤:2020年5月、最初にリリースしたのが、Salesforceに新しい顧客情報を登録するためのガイダンスです。既にSalesforceを導入してから半年が経過していましたが、どのように活動情報などを記録するかがわからないなど、まだ操作に慣れていない人たちも多くいました。
特に問題だったのが、Salesforce内での情報検索方法が分からないが故に、顧客情報の重複登録が多発していたことです。これでは、会社全体として顧客情報の活用を行っていく際に問題が生じます。そこでユーザーが顧客情報を新たに登録しようとする際には、必ずWalkMeのガイダンスが出るようにしました。ガイダンスでは、最初にSalesforceのグローバル検索に誘導して既存登録がないかを確認、本当に新規のお客様だけを登録するようにできます。
齊藤:もう1つ、加藤が作ったChatterで活動報告をするときの「半自動化」のガイダンスは、私が見てもよくできていると思います。
加藤:ユーザーはお客様への電話、Zoomでの打合せなど日々の活動をSalesforceに登録します。現在利用しているSalesforceの設定では、登録した活動を更新した際に直属上司のみにChatterの通知が行われます。しかし、ユーザーがこの情報を直属の上司だけでなく、更に上位の方などを含めたグループ全体で共有したい場合には、活動の内容を手動でコピーして、Chatterに貼り付けて都度送信していました。この作業を少しでも楽にしたいと思いガイダンスを作成しました。チーム間での情報共有をしたいとき、商談情報の画面に設置したボタンを押すと、顧客情報・活動の内容等をWalkMeのキャッシュにコピーし、Chatterの投稿画面まで遷移して貼り付けを行う。これが、ボタンを押すだけで半自動で行えるようになりました。
齊藤:半自動化の例は、業務の効率化とスピードアップに踏み込んで加藤がガイダンスを実装した代表的なものになります。また、新しいガイダンスが追加されると、Salesforceの起動時にポップアップでお知らせを出すなど、ユーザーに知ってもらう工夫もしています。操作に慣れて終わりにするのではなく、日々の営業活動を効率的に行うようにすることで、上長がコーチングに専念する本来のSalesforceの使い方ができるようになりました。
専門知識よりも営業知識が必要だったガイダンス実装
――WalkMeを使ってSalesforceのガイダンスを作るにあたり、難しいと感じた部分はありましたか。
加藤:WalkMeは高度なプログラミング知識を必要とせず、直感的な操作で使うことができました。むしろ難しかったのは、Salesforceのどの機能にガイダンスが必要かを考えることでした。私は現在入社2年目で、Salesforceに初めて接したのは2020年4月です。自分でいろいろと操作を試し、営業支援システムの仕組みを学びました。
また、Salesforceの年3回バージョンアップ以外に、入力項目の追加などの社内アップデートへの対応も必要です。以前からの機能だけでなく、新機能に関するもののガイダンスも作成しなくてはなりません。どんなガイダンスを実装すれば現場の支援につながるかに苦心しました。
齊藤:営業知識を補うため、加藤には営業が普段どんなことをしているかを理解してもらうところから始めてもらいました。営業活動に対してWalkMeをどう組み込むか。営業にとって、何が利便性の向上につながるのかを学ぶ必要があったからです。
――WalkMeを導入したことで、現場からどんな反響がありましたか。代表的な意見を紹介させてください。
加藤:半自動化のガイダンスについては、「以前に比べてChatterの入力が楽になった」という声を聞きました。営業活動は毎日実施しているので、使う頻度が高い分、評価されているのだと思います。また、WalkMeを導入した2ヵ月後の2020年8月に営業支援システムに関するアンケートを実施したところ、約7割から「(WalkMeで実装した)ガイダンスが役に立った」という回答を得ました。残りの3割は習熟している人たちなので、不満を抱えているわけではありません。ヒューマンエラーを防ぐためのガイダンスを最初に実装したので、この結果になったと見ています。
齊藤:操作に慣れたベテランには高度化を、そうではない人たちには操作のサポートを提供するというように、しっかりと両輪が回っていると感じます。
――WalkMeを導入して現時点で得られた効果をどのように見ていますか。
齊藤:まず、2019年12月の導入直後と比べ、Salesforceへの活動の登録数やChatterのトーク数が全体で3割増えました。今は落ち着いてきて毎月の入力率は平準化しましたが、これはSalesforceを使いこなしている人とそうではない人の差が少なくなったことを意味します。おそらくWalkMeを導入していなかったら、もっと時間がかかったと考えています。
システム拡張にもガイダンスで追随
――これからもガイダンス実装は続くと思いますが、優先順位はどうやって決めていますか。
齊藤:Slackに問合せチャンネルを作っています。これは、Salesforceをうまく使って結果を出している営業の意見を聞くことに役立っています。そこを見て加藤がアイデアを出し、部内でどれから実装するかを検証するようにしています。コロナ禍でも出勤することなく、ガイダンスの実装を進めることができています。
加藤:コロナ禍でも、毎月何か1つはガイダンスを追加してきました。Chatterでの報告の半自動化は、アンケート結果を受けて作ったガイダンスでしたが、それ以外は現場に意見を聞いた上で作ります。たとえば同期に会う機会があったら、その時にヒアリングして、アイデアを得るようにしています。今後は、レポートとダッシュボードへのガイダンス実装を計画しています。Salesforceをもっと理解した上で取り組んでいきたいですね。
――現在はSalesforceにWalkMeを組み込んでいますが、今後の拡大をどのように考えていますか。特にNECネッツエスアイとしてDXを実践する過程で、どのような展望を描いているのか教えてください。
齊藤:まず、来年度に向けて体制を整えることを考えています。弊社もDXソリューションを提供していますが、自分たちでもそのソリューションを使いこなせるようにならなくてはなりません。来年以降はSalesforceの利用領域がSEや保守サポートのチームにまで拡大する計画です。Sales Cloudの利用範囲が広がりますし、Salesforce Field Service Lightningの導入も予定しています。
ユーザー数は順次拡大していきますが、今後は最初からWalkMeを使える分、要件定義の段階から定着化の計画を盛り込み、充実したサポートができると考えています。これに加えて、目の前のレポートとダッシュボード利用のサポートを行うべく、ガイダンス作成を進めていけたら良いと考えています。
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