
前回はブロックチェーンのビジネスにおける活用例を紹介すると同時に、ブロックチェーンのもたらす価値を考察し、「なぜブロックチェーンを利用するのか」という問いに関して議論しました。今回は、実際ブロックチェーンを導入するにあたって多くの開発者が直面する課題である「どのブロックチェーンを利用すべきか」という問いについて、ブロックチェーンの比較軸や代表的なエンタープライズ向けブロックチェーンの持つ性質の違いに触れつつ、考察していきます。
どのブロックチェーンを選べば良いのかという問題
前回は、ブロックチェーンの3つの特徴である「検証可能なログ」、「状態遷移のレプリケーション」、「スマートコントラクト」がプロセスの効率化、オペレーションコスト・時間の削減という価値をもたらすことに触れながら、「なぜブロックチェーンを利用するのか」という問いについて議論しました。しかし、ブロックチェーンの利用目的が定まっただけでは、まだスタートラインに立っただけです。次に、直面する課題は「どのブロックチェーンを利用すべきか」という問いです。
エンタープライズ向けのブロックチェーンはいくつか存在しますが、各ブロックチェーン基盤は汎用的に設計されているため、工夫次第ではどのユースケースに対しても基本的に対応が可能です。一方、各ブロックチェーン基盤にはそれぞれユニークな特徴があるため、ユースケースごとに向き不向きが存在します。したがって、開発者はどのブロックチェーン基盤がユースケースに一番ふさわしいかを、それぞれのブロックチェーンの特徴を理解したうえで選ぶ必要があります。
しかしながら、1つのブロックチェーンのアーキテクチャや特徴を理解するだけでも難しいため、複数個を調べるためのコストは非常に大きくなり、選定が難しい状況となっています。また、ブロックチェーンは企業間連携のオペレーションの自動化・シームレス化・最適化を実現するデータベースとして、長期間の利用が想定されるケースも多いため、ブロックチェーン基盤の選定は慎重に行うべきです。
とはいえ、ブロックチェーンの比較軸そのものが曖昧で、横断的に複数のブロックチェーンを比較するための正確な情報が乏しいというのが現状です。そこで、当社LayerXではこれまでブロックチェーンを活用した事業の経験から、エンタープライズ向けのブロックチェーンを選定する上で重要な比較軸を設定し、それを代表的なエンタープライズ向けブロックチェーンに適用させた結果をレポートとして公開しています。今回はその一部を紹介していきたいと思います。
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北岡 知晃(キタオカ トモアキ)
LayerXソフトウェアエンジニア。LayerX『エンタープライズ向けブロックチェーン基盤比較レポート[基本編]、[プライバシー編]』共同執筆者。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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