総合自動車保険「トータルアシスト」など、さまざまな保険商品で知られる日本最大手の損害保険会社 東京海上日動火災保険株式会社。現在、同社では約200社にのぼるITベンダーとの取り引きを円滑に進めるために、「パートナー会社総合評価制度」、通称“ITベンダー通信簿”を推進しているという。
取り組みの背景と効果について、東京海上日動火災保険株式会社 理事 IT企画部 部長 兼 企画室長 澁谷裕以(しぶやひろゆき)氏に取材した。
パートナー会社総合評価制度とは
――早速ですが、御社ではITベンダーに対して成績をつけていると伺いました。
はい。確かにわれわれは「パートナー会社総合評価制度」という仕組みを運用しています。ただ、成績・評価という言葉だけを聞くと、どうしても一方的な印象を与えてしまいがちですが、われわれが意図するところはそのような一方的な評価ではありません。
まず、はじめに申し上げておかなければならないのですが、われわれの仕事はパートナー企業の協力なくして成り立たないと考えており、プロジェクトを進める上では、外部の力がどうしても必要です。
システム開発というのは建築に似ています。施主の希望を要求仕様に取りまとめ、設計し、大工さんに施工してもらう。ただ、一点異なる部分がある。
それは「目に見えるか、見えないか」です。建築は目に見えるために品質や進捗をその都度確認できますが、システム開発は目に見えません。それでいながら、ときには高層ビルを建設するのにも匹敵する大規模な開発を行わなければならないのです。これは本当に難しい仕事です。
しかも、システムはわれわれだけでは構築できない。それどころか、支援いただくパートナー企業の協力の質が、仕事の質を決定するといっても過言ではありません。業務を知っているとはいえ、外部の人たちと目に見えないものを一緒に作り上げていくというのは、大変なことだと思いませんか。
ですから、すばらしい仕事をしてもらうためには、われわれが何をすばらしいと考えるか尺度を明確にして、緊密なコミュニケーションを図り、可能な限り認識を合わせておかなければならない。それは、技術はもちろん、価値観に至るまでということです。
また、そうした難しい仕事を進める中で、すばらしい仕事をしてくれたパートナー企業に対しては、その努力に報いたいという気持ちもありました。
そういった背景があって、5~6年前よりこの取り組みをスタートさせました。単純にパートナー企業を格付けしたいと考えているのではなくて、システム構築に対する価値観に基づいた取り組みであることをご理解いただきたいのです。