米IPOグロース企業 Snowflakeが語る日本への参入戦略 データクラウドで分析環境構築
Snowflake株式会社 日本代表 東條英俊氏/シニアSEマネージャー 井口和弘氏インタビュー
クラウドでデータプラットフォームを提供するSnowflake。2020年9月には米国市場でIPOを果たした。ソフトウェア業界では過去最高となる38億ドルの資金を調達した同社の何が評価されたのか。国内企業の日産、インテージ、サイバーエージェントなどの導入例をはじめ、日本法人のトップらにどんな製品を提供しているかを訊いた。
オラクル出身の2人の創業者が開発

――会社概要から紹介をお願いします。
東條:Snowflakeは、元オラクルでデータベース製品の開発に携わっていたBenoit Dageville(共同創業者兼President of Products)とThierry Cruanes(共同創業者兼CTO)の2人がカリフォルニア州サンマテオで2012年に設立した会社です。クラウド時代のデータ分析環境を作ろうと、最新テクノロジーを使い、ゼロベースで製品を開発しました。約3年間のステルスモードでの製品開発を経て、2015年に一般提供開始を開始します。グローバルでは現在4000社以上のお客様が利用中で、日本市場への参入は2019年9月のことになります。Snowflakeとしてはデータセンターを持たずにソフトウェアをクラウドで提供していますが、日本のお客様はデータを海外に置くことに強い抵抗を持ちます。この点に配慮し、2020年2月からAWSの東京リージョンからサービス提供を開始しました。ちなみに社名の「Snowflake」はデータベースのスキーマの名称に由来します。
――創業者2人が製品開発をしようとしたきっかけに関連して、データ活用を進める企業が抱えるデータマネジメントにおける課題をどのように考えていますか。
東條:2012年頃はビッグデータが注目を集め始めた頃です。それ以前、データと言えば、基幹システムの中の購買履歴などが中心でしたが、大量に生成されるマシンデータやログと突き合わせ、分析したいというニーズが生まれました。ところがそこまで膨大なデータを扱えるデータウェアハウスは世の中に存在しない。これからもっとニーズが増えてくる。であれば、最新のテクノロジーを使って作ろうと考えたと聞いています。
それから約10年が経ちましたが、当時の課題はまだ十分には解決していません。The Economist Intelligence Unitと私たちが共同で実施したグローバル調査の結果をまとめた『Data’s Evolution in the Cloud: The Lynchpin of Competitive Advantage』によれば、64%の回答者がデータのサイロ化に苦しんでいることがわかっています。さらに今後の3年に向けて改善していきたいテーマとして、「データインフラの更改」「AI/MLツールへの投資」「データ戦略の構築・見直し」を重視する傾向が明らかになりました。この結果は、私たちが日本企業のCxOの皆様と対話をする中、肌感覚で感じていることとも一致します。
――AIへの期待が高まる中、データ分析ができる人材の問題の方が大きく認識されていて、インフラ整備を含むデータ戦略の課題は後回しになっているかもしれません。なぜSnowflakeのような新しいテクノロジーが必要になるのでしょうか。他のデータ分析環境(データウェアハウス/データマート、データレイク)では難しい理由について、もう少し聞かせて下さい。
東條:オンプレミスのデータ分析環境が残っていることが大きく影響しています。物理的なハードウェアに投資した場合、償却期間は5年です。その後、データ量が増加し、3年ぐらいで一杯になっても、残り2年の償却期間が終わるまで我慢しないといけない。最近ではセキュリティを理由にクラウドを避ける企業は減ってきましたし、先行する米国企業に追随する形でより使いやすい環境としてクラウドを求めるようになったと考えています。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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