日立製作所(以下、日立)は、デジタルセントリックへ変革を目指す企業向けに、AIネイティブな基幹システムへ刷新する「モダナイゼーション powered by Lumada」を提供開始した。

同サービスは、ドメインナレッジとAI技術・活用ノウハウを集約した「Lumada」のアセットを活かし、顧客の業務・IT・組織をデータドリブンで変革する2つのメニューを提供するもの。まず「グランドデザイン策定サービス」においては、変革に必要な投資の優先順位などを踏まえたグランドデザインと、システム刷新に必要な技術選定やリスク評価を含む実効性の高いロードマップを策定するという。
また、「業務・ITモダナイゼーションサービス」では、AIを活用した業務自動化による業務変革の推進、重要データの特定やデータ品質の維持、そして最新アーキテクチャへの刷新を行うという。加えて、システム刷新の全工程へのAI活用に加え、グローバル人材を活用し開発の迅速化を図るほか、グランドデザインに基づく実行体制の構築やデジタル人材の育成も行うとしている。これらにより、デジタルセントリック企業に向けたモダナイゼーションを推進することが可能になるとのことだ。
また、同サービスは、ドメインナレッジとAIの活用を通じて進化した、「Lumada 3.0」のビジョンを体現するAIソリューション「HMAX」を展開する際にも活用するという。現在、日立のビルシステム事業で提供する「HMAX for Building : BuilMirai(ビルミライ)」の進化に向けて、同サービスを先行適用しているとのことだ。具体的には、深刻化するエレベーターなどのビル設備メンテナンスにおける人手不足に対して、ベテランの暗黙知をデジタル化し、AIによる業務の自動化を推進しているという。その業務変革と並行し、設備の集中管理を担う管制システムなどのIT刷新を進めるグランドデザインを策定しているとのことだ。
「モダナイゼーション powered by Lumada」の特徴
同サービスは、日立コンサルティングの業務プロセス変革支援の実績や、データマネジメント・アーキテクチャに関する知見といったドメインナレッジに加え、日立のAI活用ノウハウやデジタルエンジニアリングのケイパビリティをもつGlobalLogicの人材も活用して提供するもの。それぞれの特徴は次のとおり。
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計画フェーズ:「グランドデザイン策定サービス」
企業が描く成長戦略と現状の差分を、GlobalLogicで実績のある「CAST Imaging/Highlight」(システムを解析して設計や仕組みを明らかにするリバースエンジニアリングを通じて、ブラックボックス化した現状システムの構造を可視化するデジタル技術)なども活用して分析し、優先して取り組むべきプロセスを選定するとともに、売上拡大に向けた要所の設定や業務・システム・人材の観点を踏まえたグランドデザインを策定するという。
また、グランドデザインをもとに、ハイパースケーラなどテクノロジーパートナーを含めた技術選定やリスク評価、コスト管理の基準、スケジュールの試算などを行い、実効性の高いロードマップを策定。これらにより、投資の優先順位に悩む経営層の意思決定を支援するとともに、AIを前提とした業務変革とシステム刷新を同時に推進し、業務変革の成果を早期に実現するとしている。
実行フェーズ:「業務・ITモダナイゼーションサービス」
1. AIエージェントを活用した業務変革
日立は、経営から現場業務まで200種以上の多様なAIエージェントの開発・運用実績を蓄積しており、これらの環境やノウハウを活用することで、顧客が変革したい幅広い業務ニーズに対応可能。また、日立のドメインナレッジを活かし、業務上の意思決定や判断の背景となっている暗黙知も含めた重要なデータを特定し学習させることで、AIの推論能力を高度化するという。
これにより、実効性の高いAIエージェントが開発可能になり、これまで人でしか対応ができなかった業務に対しても、AIエージェントを早期に適用することで業務変革を実現するとのことだ。
2. AI活用に適したデータの品質を維持するデータマネジメント
日立は、データマネジメントの知見をもとに、継続的にデータ品質を確保するデータ統合基盤とその運用を提供するという。また、既存の基幹システムなどから安全かつリアルタイムにデータを収集・統合し、効率的にデータをインプットできることでAIエージェントが担う業務の精度と信頼性を向上することが可能に。
加えて、AIエージェントのデータアクセス制御などセキュリティ課題に対しても、グローバルな専門家の監修のもと、業界や地域の規格に準拠したベストプラクティスに基づき構築・運用するという。これらにより、データの収集・活用のライフサイクル全体を通じたデータガバナンスを実現するとしている。
3. ITシステムのアーキテクチャーを適切に刷新、AI・グローバル人材の活用で加速
日立における数100件以上のモダナイズ実績を活用することで、ITシステムを、迅速性を重視する領域と安定性を重視する領域に切り分け、こうした特性と優先順位に基づいてコンポーザブルなアーキテクチャに刷新するという。既存資産の継承においては、日立の開発フレームワークにより全工程でAIを活用しながら、高品質な仕様書の再生から適切なコード生成まで実現し、加えて実績のあるモダナイズツールも組み合わせることで、AIとの親和性やメンテナンス性に優れた資産へと刷新するとのことだ。
また、日立のセキュアで標準化された開発環境を活用するとともに、今後、グローバル人材を積極的に活用していくことにより、より一層迅速な開発を実現していくという。加えて、ITシステムの要件に応じて、スケーラブルかつ耐障害性の高い基盤や、社会インフラ向けの堅ろうな基盤も提供可能だとしている。
4. 組織の変革と人材育成
日立は、グランドデザインに基づく実行体制の構築や、AI活用・アジャイル開発をけん引する人材の育成、そして実践による定着化まで包括的に支援するという。また、ROIやKPIの達成状況を可視化することで、ビジネス部門とIT部門が共通目標に向けて継続的に改善できる環境づくりにも伴走するとのことだ。
「モダナイゼーション powered by Lumada」を構成するサービス
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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