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続々と日本に参入する海外SaaSは導入すべきか?

edited by DB Online   2021/05/28 14:00

大手SaaS+新興SaaSのエコシステム

 ただ、やはり柱になるアプリケーションはあります。マーケティングのMarketoやCRMのSalesforce、ITのチケット管理をするServiceNowなどです。米国ではWorkdayもこの一員です。これらのアプリケーションとは、新興SaaSアプリケーションも接続性をもっているので、統合が比較的楽というのも、SaaSアプリケーションの採用理由かと思います。新しいデジタルのエコシステムは、SaaSで作られているということですね。どの大手SaaSベンダーも、フラットフォームビジネスを展開しており、共有基盤の上に自社のアプリケーションを構築して、そして、外部のベンダーにも、その基盤上でアプリケーションを作成する、連携するように、積極的に働きかけます。プラットフォームですから、データが集中的に格納され、それを機械学習やAIを使って、可視化したり、予測に使ったりするのが、プラットフォームでのトレンドです。データが、完全に中心のアーキテクチャです。人、もの、カネが、企業の重要な資産と言われてきましたが、人の次にデータがもっとも大事な資産になってきているのかもしれませんね。ただ、ある企業のIT部門長に言われたのですが、こうプラットフォームが増えると、どのプラットフォームを選択するのかが難しくなると。いつの時代も、層は違えど、ベンダーロックインは課題です。

 ですから、コアとなるSaaSアプリケーションはIT部門で導入に関与して、柱を作りつつ、部門にはそれと連携するようなSaaSアプリケーションの導入を進める作戦が必要だろうと思います。

 また、IT投資分野の優先事項にも、日米には違いがあります。日本がトレンドに乗り遅れているだけかもしれませんが。ガートナー社の「日本企業のデジタル化は加速しているが、世界のトレンド・ラインより約2年の後れを取っている、との見解を発表」では以下のように述べています。

テクノロジ投資の動向について、日本企業のCIOと世界のCIOには明らかな違いが見られます。1つ目は、日本企業のCIOは「基幹システムの改良/刷新」への投資を重視している点です。日本企業のCIOの59%が投資を増やすと回答しているのに対し、世界での割合はわずか36%であり、10%は削減すると回答しています。2つ目の違いは、「ビジネス・インテリジェンス/データ・アナリティクス」への投資です。世界の企業のCIOの58%は同領域への投資を増やし、投資増加領域として第2位となっている一方、日本企業のCIOはわずか48%しか同領域への投資を増やさず、投資増加領域として第5位にとどまっています。(※)

 SAS Instituteに在籍していたので、これは私の実感と同じです。ただ、2年以上の遅れだとは感じます。以前、過去数年のGDPの伸びとSAS Instituteの日本での新規売上を相関分析したことがあるのですが、そのときはかなりの相関度合で景気に左右されていました。景気が悪くなると、優先事項の低い分野から押さえられますからね。それが以前はデータ系でした。今はわかりません。

 Systems of Record(SoR)とSystems of Engagement(SoE)が云われて久しいですが、まだまだ日本はトランザクション処理のためのSoRが中心で、企業競争力で大事だというSoEへの投資が追いつていないのが現状です。先ほど述べた大事な資産であるデータ活用のためのビジネス・インテリジェンス/データ・アナリティクスが代表格で、CRM、マーケティング、人事のSoE分野でのIT投資や活用に遅れを取っていると思われます。外資系企業にいると、日本オフィスの貢献度というのが見られます。私の経験上、日本市場で10%以上の売上比率があると“よくやっている”と言われ、5%くらいだと“So So”、それ以下だと“機会だ”(=改善しろ!)と言われます。大半のSoEのベンダーの日本市場の売上比率は5%以下なのではないでしょうか。上場企業であれば、IRのレポートを見れば確認できる場合があります。

 DX、DXと言われますが、SoE分野でどのようなIT投資をして、積極的にSaaSを活用して、差別化を作っていくかがカギと思えます。そのためには、あたり前ですが、ビジネス戦略が大事です。ITは手段です。

※ ガートナーレポート: https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20210201



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著者プロフィール

  • 北川裕康(キタガワヒロヤス)

    クラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workdayなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションを担当。その以前は富士通とDECでソフトウェア技術者。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、日々格闘中。

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