freeeが目指す「統合型経営プラットフォーム」
中小企業庁によると日本における企業の99.7%が中小企業であり、約630万社が存在しているという。こうした中小企業を対象に「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げているのがfreeeだ。来年7月で創業から10年目を迎える同社CEO 佐々木大輔氏は、「目指している方向性について、世の中のニーズも増していることを感じている」と説明する。
2013年にクラウド型の会計ソフトを提供しており、これまでのサービスの中で重要視してきたのが“統合型”というコンセプトだという。これは、請求書発行や入金、レジ、支払いといった業務をこなすだけで自動的に帳簿に記帳されていくようなものであり、創業当初から一貫した取り組みが行われている。実際に約28万社が同社の製品を利用しており、月1,000件の入金処理自動化や経理処理時間の短縮などの成果を上げている企業もあるといい、スモールビジネスにおいても業務の自動化や可視化が進んでいるとした。
こうした、これまでの取り組みをベースに10年目を迎えるにあたってfreeeは、「誰もが自由に経営できる、統合型経営プラットフォーム。」という新たなビジョンを発表した。この新たなビジョンは、大きく3つの柱で構成されていると佐々木氏は語る。
1つ目の柱は、「統合型クラウドERP」。これまで取り組んできたことを発展させ、あらゆる業務とデータをつなげることで会計以外の部分でも自動化と可視化を進めていくという。既に規模の大きい企業ではERPを活用した経営判断が行われているが、これをスモールビジネスにおいても実現するというのだ。この統合型クラウドERPの実現に向けた新サービスの1つとして、カード事業に参入し「freeeカード Unlimited」を提供する。
Visaの「Fintechファストトラックプログラム」における第一号案件でもあり、β版を本年秋に、正式版は冬頃に提供予定だという。本施策における大きな特徴として、「freee 会計」内のデータを活用した独自の与信モデルにより、現時点で最高3,000万円という高い限度額を実現することができる点が挙げられた。また、利用明細への反映も1~3日以内と早く、経費精算やワークフローと連携した従業員のカード利用管理も可能だとしている。
こうしたカード事業への取り組みについて、カードの支払い関する経理業務を自動化することで、リアルタイムで支出の管理がfreee会計上で行えるだけでなく、与信枠の判断に会計データを利用しているため、本カードを使うアクション自体が経営に結びつくという。こうした特徴も、統合型クラウドERPとして複数の要素を絡めているからこそ実現できると佐々木氏は述べる。
また、統合型クラウドERPとして契約、固定資産、人事労務といった業務領域も新たにカバーすることになる。具体的には、人事労務領域では、統合型人事労務システムとして「freee 人事労務」を提供。従業員の勤怠打刻や休日申請、住所変更といったものを同システム上で管理することでデータを従業員DBに自動蓄積し、給与計算などを自動化できるという。
さらに、「freee 勤怠管理 Plus」という新しいプロダクトを投入。これにより、50名以上規模の企業に多い複雑化した勤怠管理に関するニーズをくみ取り、統合型人事労務システムを活用できるスモールビジネスの範囲を広げている。加えて、同システムにおいては、本年度中に固定資産に関する機能強化を図る予定だとした。