6つの手順がループしながら解決の方向を決めていく
たとえばITの価値改善はTBMによってどのように実現するのだろうか。ITサプライチェーンを構築・最適化を実現するフレームワークを成塚氏が説明した。成塚氏によると、6つの手順がループしながら解決の方向を決めていくという。
「組織の中で、月額3万円のデスクトップパソコンを提供していたとします。しかしユーザー部門から量販店では1台6万円で販売しているのに、なぜ我が社では毎月こうもお金をとられてしまうのか? 高いのではないか? と疑問が出たとします。その時はまずユーザー部門へ、金額の内訳を示す必要があります。3万円の中にはソフトウェアのライセンス費や、サポートデスクの人件費が含まれていますよね。これを説明しなくてはいけない。この説明をする中で、ユーザー部門の人たちとの関係性が変わるんですね。課題があった時にIT部門の中だけでコスト削減を考えるケースもありますが、TBMではそれに加えてユーザー部門にも関与していただくことを視野に入れています」
つまりコスト削減のために、部署の壁を超えてコミュニケーションを取るというわけだ。その結果としてどちらの部署も努力をしてコストを削減する。
「サポートデスクが24時間対応されている場合、これを18時までにするとどれくらいコスト削減できるかという会話をユーザー部門としていただく。こういったコミュニケーションからコラボレーションを加速させていき、企業全体の意思決定をしていくというわけですね。こういったサークルを回していくことになります」
TBMがITコスト、利用状況、パフォーマンスの可視化を通じて、IT部門とビジネス部門の会話を変化させていることがわかる。また、アクションに結びつけるための可視化は、複数のデータからマルチな視点で見せる必要がある。それぞれの立場で見たいITコストが違うが、それはデータ連携されたマルチな軸で見ないと可視化することができない。その視点が、他部署間であっても共通言語になり得る大きな理由ではないだろうか。
3年間で累積20億ドルの削減に成功した「Bank of America」のTBM活用
成塚氏がひとつの事例として取り上げたのは「Bank of America」。ノースカロライナ州に本社を置く、大規模な銀行で従業員数は14万人だ。
「TBMの導入前はカスタム開発したIT投資管理システムでは透明性を確保できず、各分析に必要な情報も揃っていませんでした。また利用状況や支出実績の迅速な把握や、全体のIT予実の把握に基づくアクションも取れていないという状況でした。
そうした中でBank of Americaのテクノロジーを最適化し、全社ITの総合管理や効率を向上させるためにApptioとTBMは不可欠でした。コストを可視化していき、導入後は3ヵ月でレガシー資産1億ドル分を特定、関連する支出も5億ドル削減することができました。その結果3年間で累積20億ドルの削減も実現しています。IT予実把握と予測の精度も大幅に改善し、クラウド移行も加速させ移行目標数を230%達成しました。
ApptioではIT投資の最適化を実現するSaaSソリューションとして、TBM Councilで議論されたベストプラクティスやFinOpsを実現するプロダクトを提案しています。ソリューションを売るだけでなく、方法論を紹介しています」
DXの浸透やITテクノロジーを使った製品やサービスの創造は、IT部門だけが行うものではなく、経営層やビジネス部門と共に推進していく必要がある。そのための課題を部署や立場関係なく理解できるよう支援してくれるのがTBMと言えそうだ。