クラウドはDX先進国から2年の遅れ 日本におけるDX導入の実情
コロナ禍の影響もあり、注目を集めているDX。多くの企業が導入を試みようとするものの、うまく取り入れられていないのが実情ではないだろうか。成塚氏は日本の導入の遅れについて世界の現状から説明をする。
「まず、DXの実態を見ていきましょう。『クラウド』、『データ』、『アジャイル』という3つがDXの鍵となる要素ですが、まず実態としてクラウドはアメリカや中国といったDX先進国からみて2年遅れています。クラウド導入率も平均18%にとどまっています。さらにデータの利活用からビジネス成果を出している企業は3%で、アジャイルに関しては採用率が大企業でも40%です。これは全体で見ると5年遅れになっています」
成塚氏によると日本においてDXやITへの投資は、コストとして捉えられるケースが多く導入が遅れているということだ。さらにコロナ禍をきっかけに導入が増えたと言われるが、その中でも日本は遅れているという。
「COVID-19以降のデジタルサービス利用状況を見てみると、日本だけ極端に変化が少ないことがわかります。これは消費者ではなく、生産者側の問題でしょう。次に何が日本のDX浸透を失敗させたか見ていきましょう」。成塚氏はデジタル変革失敗には「組織」、「人材」、「文化」の3つの要因があると示した。
- 「組織」----組織間でのDXに関する意識の違いである同床異夢やリーダーシップの欠如
- 「人材」----組織内でのIT人材やデジタル人材の不足
- 「文化」----ITに関する理解不足やIT部門と事業部門での共通言語がない
「この3つの課題を解決するにあたって重要なのが、組織、人材、文化にまで踏み込んでいるベストプラクティスです。IT部門と事業部門の共通言語を作ることや、リーダーの関与を促すことなどですね。プロジェクトを進める際は階層型組織のほうが早いのですが、これだけではイノベーションはなかなか起こらない。そこでここにネットワーク型を入れることや、パートナーを巻き込んでいくといった複合的な考え方を持つことが大切です」
TBMでデータを可視化させ「壁」を取り払う
考え方の軸となるのがTBMだ。Technology Business Managementを意味するTBMはITコスト、利用状況、パフォーマンスの可視化を通じてIT部門とビジネス部門の会話を変化させる。これにより、投資の最適化と変革の加速を実現するための、データに基づく意思決定を支援するメソドロジーだ。
「2007年にTBMのコンセプトは立案されました。各社のCIOはIT部門が提供している価値の説明に苦慮しているという共通の課題があることを認識し、その課題解決のためにApptioが設立されました。さらに2012年にはApptioが設立者となり、NPO法人としてTBM Councilを発足させています。現在11,500名以上の会員が参画し、IT部門経営においての課題や進化するテクノロジー投資を含めたIT部門のマネジメントについて知見の共有を行っています」
データを可視化することで、どのような変化が起きるのか? TBMは下記のケースにおいて課題解決を促してくれる。
これらの課題は基本的に共通言語がなく、他部署の理解を得にくい原因がある。それらをTBMの活用を通して、具体的に可視化することで解決していく。
製造業のケースでは、流通在庫の最適化ができ、需要に基づいた対応が可能になる。またマーケティング領域では顧客獲得費用の把握が、そしてIT部門においては、利用状況に応じたITリソースの適切な調整が可能となる。
成塚氏はこうした可視化が、利用部門との会話を意義のあるものに変えてくれると言う。そのため共通言語を持たなかった部署同士であっても、同じ認識の基、プロジェクトを進めることができるというわけだ。