コロナ後も続くSaaSの波:小椋社長
「アフターコロナの時代にこそ、SaaSの本格的な波がくる。昨年からはコロナ禍により緊急対応的なSaaSの導入が進んだが、そのことによって生産性を高めることに気がつき、コロナが終わる頃にはSaaSはより力強い成長をとげるだろう」
こう語るのはHENNGE 代表取締役社長兼CTOの小椋一宏氏だ。SaaSの進展は2011年の東日本大震災から始まったが、その時期はSaaSもまだ洗練されておらず導入の波はすぐに静まった。その後、働き方改革やDXという言葉の浸透とともに緩やかに成長してきたが、「決め手に欠けていた」と小椋社長。コロナ禍を期に急成長を遂げたが、本格的な波はむしろこれからだと自信を見せる。
HENNGEのクラウド認証基盤「HENNGE One」の発表も遡れば、2011年。前社名のHDE時代のEメールのセキュリティのソリューションとして始まった。「その後成長を続け、この分野ではトップシェアにあると自負している」と小椋社長は胸を張る。その一方でクラウドの導入にはまだまだ障壁が多い、とも。今回の新機能の発表はその障壁を取り除くものだという。
コロナ禍で顕在化した課題に答えるアップデート
リモートワークが進んだことによるセキュリティ被害の増加が最近の調査にもはっきりと現れている。IPAの調査によると2021年の情報セキュリティ被害は、「ランサムウェアによる脅威」、「標的型攻撃による機密情報の漏えい」に次ぎ、3位に「テレワークなどのニューノーマルを狙った攻撃」が新たに浮上している。これらは、私物のPCや自宅PCからのセキュリティ被害によるものだ。また情報漏えいの主要な原因としては、「ウイルス感染、不正アクセス」(43.5%)に次いで、「メールの誤表示・誤送信」(31.0%)とメールによるリスクもかなり高いとされる(東京商工リサーチ調べ)。
こうした理由から、今回のHENNGE Oneのアップデートは、1)PPAP廃止への対応、2)標的型攻撃からメールを保護、3)テレワークセキュリティ対策の強化などを行なっている。
PPAPからの脱却を進めるために
中でも今回のアップデートの目玉は、「脱PPAP」のための新機能だ。
PPAPとは、「パスワードZIPファイルをメールに添付し、自動的にZIP暗号化して送信後、別メールでパスワードを連絡するというセキュリティ対策」のことで、今でも多くの企業が採用している。最近ではこのPPAPの危険性が指摘されてきた。PPAPを悪用したサーバー攻撃の被害が広がっている今、その有効性に疑問符がつき始めている。2020年11月、平井卓也デジタル改革担当大臣が、「PPAPをやめます」とツイートし、国会答弁でも「そもそも、セキュリティ対策として有効ではない」と語ったことでも話題になった。