JALが泥臭く進めるセキュリティの“自分ごと化” 「現場との二人三脚」で進めた施策の裏側を訊く
社員に理解を促したいことは「山ほどある」中、セキュリティ担当者がまずとるべき行動とは
日本航空(JAL)が、情報セキュリティを単なるIT課題ではなく、航空機の安全運航と同等の「安全文化」へと昇華させる挑戦を続けている。この取り組みを牽引するのが、現場とIT企画の両面でキャリアを持つ嶋戸洋祐氏だ。JALグループは、DXの加速にともなうサイバーリスクの増大や、過去のインシデントから得た教訓を背景に、「人・組織」の強化に注力。現場社員が日々の業務で実践している安全憲章の指針をセキュリティ領域にも適用する「JAL情報セキュリティアウェアネス活動」を推進している。本記事では、KnowBe4が2025年11月20日に開催した「KnowBe4 Japan Forum 2025」での講演と個別インタビューで訊いた、同社の地道かつ戦略的な取り組みについて紹介する。
JALインフォテックからJALデジタルへ DX戦略の強化が進む
JALでデジタルテクノロジー本部 IT品質監理部 リスクマネジメント室 室長を務める嶋戸洋祐氏は、国際線予約・チェックイン業務、IT企画部門でのアプリやネットワークの管理などを担当した後、情報セキュリティの世界に入った。
着任当初はセキュリティのスキルやノウハウを持っていなかった同氏だが、「ビジネス部門での業務経験を培ってきたからこそ、その経験が今の取り組みにも活かせているのではないか」と語る。
JALグループは、連結で54社、約38,000人の従業員を抱え、コードシェア便を含め世界68ヵ国・地域、395空港をカバーする巨大組織だ。その活動の基盤を情報セキュリティで守ることは、社会的責任そのものでもあるだろう。そんな同グループが情報セキュリティの強化を全社的な「文化醸成」の挑戦として位置づけた背景には、DX戦略の強化と過去の苦い経験があった。
まず、同社はDX戦略の強化と持続的な成長を目指し、2025年度にIT・デジタルのグループ中核会社であったJALインフォテックをJALデジタルへと社名変更した。この組織再編の意図は、デジタルテクノロジー本部の機能をJALデジタルに集約し、業務部門とIT部門の連携を加速させて単純な事務的プロセスを効率化、本質的なビジネス価値の創造にリソースを集中させる点にある。
このような急速なデジタル推進体制の一体化とビジネスの加速は、同時に情報セキュリティリスクの急増を意味する。特に航空・空港分野は、個人情報や機密性の高い運航情報が集積するだけでなく、システム障害が航空機の遅延や停止といった重大な事業影響に直結するという、極めて高いリスク特性を持つ。
実際、近年は世界的に航空会社を標的としたサイバー攻撃が急増しており、最大で600万人の情報漏洩の可能性が報じられた事例や、国内の航空会社が標的となったDDoS攻撃による大規模な遅延・欠航が発生し、事業停止に等しい影響を受ける事態も起こっている。これらの事例は、セキュリティ対策が「情報漏洩」だけでなく、「事業停止(運航停止)」という安全運航そのものに関わる脅威だ。
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