富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組んで来た著者の実践に基づくDX連載の第9回。著者は、富士通 デジタルビジネス推進室エグゼクティブディレクターの柴崎辰彦氏。前回から、シリーズの第2部となる「マインドチェンジ編」となり、実践のための5つのポイントを全5回でお届けする予定。今回は、実践ポイントの2つ目として、どのようなデジタル変革を起こすのかについて紹介する。
時代が求めるイノベーション
前回、この連載でデジタル時代には“自ら試す”というスタンスがとても大切だということをお話しました。今回は、実践ポイントの2つ目として、どのようなデジタル変革を起こすのかについて考えてみたいと思います。

パーソナルコンピュータの父と呼ばれたAlan Kayは、“未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ”というメッセージを残しています。第四次産業革命のデジタルの荒波を乗り越えるには、受動的に与えられた仕事をこなすだけでなく、自ら能動的に取り組み、場合よっては新たな仕組みを発明することが求められます(【DXチャレンジ編】第4回 現場やスタッフ部門のDXの理解を促すために〜デジタル変革を産業革命から考える)。
時代が求めるイノベーションとはどのようなものでしょうか。スタンフォード大学のダッシャー教授が日本に来た時にイノベーションについて語られていました(図2)。左右の軸は、マーケット、すなわち市場として顕在化しているか否か。上下の軸は、実現する技術が新しいか、枯れた技術かを表しています。
この軸で見ると、左下の象限が一番わかりやすいと思います。テレビ市場は、すでに多くのプレイヤーが市場参入しており、使われる技術も汎用化されたものです。言ってみれば枯れた技術の組み合わせです。一方、右下の象限は、枯れた技術で新しいマーケットを立ち上げた例として、スティーブ・ジョブズの創り出した世界を表現しています。携帯電話やMP3プレイヤーの技術です。左上の象限のジェット機はご存じでしょうか?そうホンダジェットですね。4輪2輪のホンダが10年かけて飛ばしたジェット機としてテレビで報道されていました。さて、デジタルの世界で重要な象限はどこでしょうか?
最後に残った右上の象限は、まさにこれからのデジタルの時代にチャレンジしなければならない領域です。このSquareというサービスを利用したことある方も多いかもしれません。大きなPOSレジがなくてもスマートフォンやタブレットで簡単に決済が出来てしまう仕組みです。最近では都内の飲食店でも利用できるところが増えてきましたが、実はサービスの生い立ちが非常にユニークなのです。何とガラス細工職人とソーシャルメディアのTwitterの創業者のコラボレーションから生まれたサービスだと言われています。新たなデジタルビジネスの創出にはセレンディピティ(偶然の出会い)も欠かせません。その為にはそれなりの仕掛けや仕組みが必要です。

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柴崎 辰彦(シバサキタツヒコ)
香川大学客員教授 富士通株式会社にてネットワーク、マーケティング、システムエンジニア、コンサル等、様々な部門にて“社線変更”を経験。富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組む。CRMビジネスの経験を踏まえ、サービスサイエンスの研究と検証を実践中。コミュニケーション創発サイト「あしたの...
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